未知の世界7
あれから順調に研修と健診を受け、とうとう私は日本への帰国まで、数日となった。
今日は一人でお父さんとお母さんのコテージに来ている。
そう、本当のお父さんと、お母さん…。
このコテージが私に唯一残してくれたもの。
いや、違う…
アメリカに来て、そして病気が悪化して、
もう一つ残していてくれたものがあることを知った。
お父さんとお母さんが生涯かけて研究してきたこと。
それがまさか、自分の子供を救うなんて、当時は思ってもみなかったことかもしれない。
もし…
もし、お父さんとお母さんが生きていたら…
どんな人生が待っていたのか、想像がつかないけど。
今、私が孝治さんやその周りの人達と、幸せに生きていることは、お父さんとお母さんが生きていたらなかったし、その人達とも出会わなかった。
医者にもなってなかったかもしれない。
孝治さんとも出会っていなかったかもしれない。
お父さんとお母さんがいないこと、これ以上の悲しいことはないけど、その分、それ以外のことを幸せに感じることもできる。
だから、今、私は
『幸せだよ』
椅子に座りながら、目閉じて呟いてみると、
開いていた窓から、大きく風が入ってくる。
まるで、お父さんとお母さんが、返事をしてくれたように。