未知の世界7
思わず走り出しそうになったけど、
『走るな!』
っていう声が聞こえそうで、早歩きで近づく。
「孝治さんっ!」
そう言いながら近寄ると、大きく手を開いた孝治さんに、強く抱擁される。
私は胸が熱く、幸せに包まれるってこういうことだなって思いながら、目を閉じる。
『会いたかった。元気なかなに。』
「うん、私も。ずっと、ずっと会いたかった。」
ここは日本だけど、周りに人がいるけど、孝治さんは周りを気にせず、堂々と私にキスをする。
何ヶ月もの寂しい気持ちは、一気に埋められ、それに応えるように一度離れた唇を、今度は私から近づける。
『こんな大胆なかな、アメリカにやって正解だった』
耳元でボソッと囁かれ、
一瞬で今自分のしたことを思い出すと、顔が赤らむのがわかる。
自分の頬を触ると、
『あれ?かなちゃん?お熱でもあるのかな?』
なんてふざけた調子で、抱きしめながら私の顔を見つめる孝治さん。
「もうっ!」
孝治さんの肩を軽く叩けば、
嬉しそうな顔の孝治さん。
出国前のあの険悪なムードはなくなっていた。
時間が解決してくれるものもあるんだと、改めて感じられた。