未知の世界7
広いリビングの隣には、それもまた広い和室があって。


窓際には洗濯物でも干すのかな?




洗濯竿がセットしてある。





そこにさっきの点滴を手早くつけて。





たまにお客さんがあるから、クリーニングに出してあったというふかふかのお布団を広げてくれて、そこに寝かされる。






エアコンを付けながら、






『あのまま外にいたら、熱中症になってただろうね。』





そう言って、横にした私の腕を知らない間にしっかりと掴み…腕にアルコール消毒をしている。






「早い…」






点滴の手際さではなく、私を抑えんばかりの点滴。






『ほらさ、かなちゃんって実は針がむちゃくちゃ嫌いだよね?』






いや、誰もが嫌いだと思いますよ…。






『それに、久しぶりにかなちゃんに治療するって、ドキドキする。』






嬉しそうな、でも恥ずかしそうにする進藤先生に、
そんなことを言われたら、こちらが恥ずかしくなってしまい、口角が上がる。






『笑った。




笑った顔のかなちゃんの方が、いいよ。』






ニコニコしてる進藤先生に、何か引っかかるこの気持ち。







痛みの少ない進藤先生の点滴。






素早く終わり、天井を見ていると。






『ほらさ、久しぶりに聞かせてね。』






そう言いながら耳に聴診器を掛けている進藤先生。






「えっ?」






それにはつい言葉が漏れる。







『ほらさ、何年ぶりだろ。





よくなった心臓も、最近の肺も聴かせてよ。』







そう、留学期間前も、ほとんど進藤先生の診察ではなく、お父さんや石川先生の診察を受けてきたから、進藤先生は久しぶり。







私が了承するよりも早くに、私の胸元から心臓と肺の音をゆっくり聴く進藤先生。






しばらくして、聴診器を外す進藤先生。





『うん、心臓がとても良くなってるね。
肺は相変わらずだけど。』





一通りの診察を終えて、安心したようで、立ち上がると。






『今日は一日ゆっくりして、明日でも明後日でも、帰りたくなったら帰ればいいよ。』







「いえ、これ終わったら、帰ります…」






と言ったものの。






『そんな気持ちで帰っても、辛いだけでしょ?』






「進藤先生、仕事もありますし、お邪魔になりますので。」






『大丈夫、明日はお休みだから。
家に居なくても、合鍵あるしね。』






ウインクしながら言ってるけど…私なんかが進藤先生の家に家主なしでいていいのか…





この後か…もしくは、夜には帰らないと…






そう心に決めた。






『じゃあ、ゆっくり寝てて。また終わり頃に来るから。何かあったら言ってね。



お手洗いは、さっきの玄関の方にあるからね。』





「ありがとう…ございます。」





今は、ご厚意に甘えることにしようと。






目を瞑る。





そのまま寝付けることはなく、目を瞑ると、目眩に襲われる。






寝ていたのに…う〜ん…





点滴をしていない方の手で頭を抑える。






なんだろう…これ。







今まで勉強してきたあれこれを思い出そうとしたけど、これ以上頭を使いたくない気持ちが勝って、すぐに考えるのをやめた。







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