未知の世界7
『どうだ?調子は…』
いろんな感情を抑えて、孝治はかなに声をかけた。
「……目眩が少しずつ治ってきました。」
アイマスクを外さないで答えるかな。
『そんなに辛かったか?MRI…』
溜め息と共に、尋ねる。
「はい…少し目を開けてしまったら、怖いくらいに目が回り始めて…
それを見てしまったせいか…目を瞑っても目眩が止まらなくて。
ずっと我慢してた吐き気が我慢できなくなって…
はぁ
とにかく、ごめんなさい。」
アイマスクから少し目を出して謝る、かな。
MRIの最中に嘔吐してしまい、検査が中断し機械に吐物を撒き散らしてしまったことを思い出し、後悔した。
『脳神経科の先生には、俺から謝っておいた。
メニエールにはよくあることだそうだ。』
「メニエール?」
『分かるか?メニエール症候群だ。』
「激しい貧血でなくて?」
『そう。
激しい目眩、激しい嘔吐、動きが取れなくなる。
検査の結果、メニエールだと判明した。
これから薬を飲み続ければ、また起きることはそうないそうだ。』
「飲み続ければ…」
そう言ったまま黙ったかな。
それが一番難しいと、自覚していた。
「今まで以上に、飲まなかったは、許せないぞ。」
そう孝治に言われ、なぜいまこの病院で横たわたるに至っているのか…
しっかり思い出していた。
今日一日、自分の薬の管理が招いたことを思い出していた。
『一週間、メニエールの症状を観察して、治療するのに必要だそうだ。
一週間入院したら、帰宅して、数日過ごして何もなければ、また仕事ができるから。
とにかく今はゆっくり休むことだな。』
数時間前からケンカというか、怒られていたことが嘘のように、優しい孝治さん。
かなの頭を撫でて、部屋を後にした。
「はぁ…また新しい病気か…」
かなは涙が出そうになり、アイマスクを下ろした。