未知の世界7
午後からは受け持ちしていた患者さんの引継ぎと、新しく受け持つことになった患者さんのカルテの確認の予定。
入院していた子も退院しているけど、通院はしていて、いつ再び入院してくるかわからない。
時間のできた時に、入院病棟を回ってみた。
一年も経つと、私がいた時に入院していた子はあまりいない。いても、一度退院して、再び入院してきた子くらいで。
それでも顔見ると、わくわくと言っては闘病中の子に失礼だけど、またここで子供たちと一緒に病気と闘っていけるとおもうと、嬉しくなった。
アメリカで学んだ医療は、石川先生がしていることがほとんどだった。
もちろん最新の治療方法もあったけど、薬に関しては、日本で許されていないものがほとんどなので、
どうしても同じことはできない。
でも、指導医にそして、アメリカで教わってきた子供との接し方、子供の味方は、これから全て生かすことができる。
そんなことを考えて歩いていると、
『あー!』
と前の方からナース服で小走りで来るのは・・・
え!?
あれ?
「えーーーーーー!!!!」
病棟の廊下にもかかわらず、つい驚きのあまり声を出してしまった。
自分の声と目の前まできたいつかここに入院していた、
そう森良子ちゃん。
『かなセンセっ!お久しぶりです。』
あの反抗精神旺盛で、病室を抜け出してた彼女が、立派にナース服を着て立っているのを見て、
思わず涙目になってしまった。
その後ろからスタスタと歩いてくるのは、
お久しぶりねのまい!!
『もう、私より先にかなに会うなんて~』
と言いながらも、嬉しそうに近寄ってくる。
『あの時の彼女は、今ここで実習中よ。かな。』
そう、まいもあの当時ここで働いていたからよく知っている。二人で涙目になってあの頃を思い出している。
廊下で話すのもよくないので、ナースステーションの休憩室へ。
「いつまで実習?」
『もう二週間が経った頃なので、あと二週間です。』
受け答えもすっかり大人。
「そのあとはどうするの?」
『この病院に来るつもりです。』
「そう!仲間が増えてうれしい!」
『ねぇ、彼女の実習終わりに、三人でご飯に行かない?
そうそう、直子ちゃんも呼んで。』
そう言い出したのは、女子会大好きなまい。
「いいねいいね!!良子ちゃんはどう?」
『行きたいです!!
あ、アルコールはまだ禁止されていて飲んだことはないけど・・・』
あ、そうだった、まだ完治ではなかったね。
4人での女子会は二週間後に行くことに決めた。
そんな話をしていると、
『何やら楽しそうな話をしているな。』
と入って来たのは、幸治さん。
『「ひゃっ!!」』
そういったのは私だけでなくて、隣にいた良子ちゃんも。
『あれから看護学校がここから離れているという理由で、紹介状を書いたけど…この病院から違う病院に行ったはずなのに、そこには全く行ってなかったみたいだな。
それなのに、よくここに来れたなぁ?』
と低いトーンの幸治さんに、私までもドキドキしてうつむいた。
気づくともうまいはいない・・・。噓でしょ!?
『ぇっと・・・その・・・町のクリニックには行ってまして・・・
でも、そこは看護学校卒業とともに、こちらのクリニックに変えよう「この病院にしなさい!!」
そういわれ『はい・・・』
と小さくつぶやく良子ちゃんに、私までもがしゅんとなってしまった。
『そしたら看護学校卒業後にすぐにこちらに来るように。紹介状はいらないから、俺のところに電話すること。
その連絡がない場合、ここでの勤務の日にはこちらから健診に来るけどいいな?かなも、彼女が来なかったら、一緒に健診な』
「えっ!!!!それは違うんじゃないですか?私は関係『関係あるぞ。お前の勧めで彼女は看護師を目指したんだろ?』
そうだった・・・
「はい・・・大丈夫だよね・・?良子ちゃん?」
隣の彼女は『は、はい・・・』と再び小さな声で不安そうに答えた。
良子ちゃん、幸治さんの診察を受けに来る気、ない・・・?
と若干も思いながら二人で叱られた感じとなって、幸治さんは立ち去った。