未知の世界7
『あ~かなちゃんが、どんどん大きくなってるね、幸治くん。』
なぜかいつも小児科医局に来て幸治さんと話し込む進藤先生は、さっきのお昼ご飯が終わっても幸治さんと一緒にいる。
『そうですか?やってることはここに来た時と変わらないですよ。』
進藤先生と一緒に褒めてくれない幸治さんは、いつものこと。
『これからも一緒だと困るなぁ』
と私の隣の席の石川先生。
この三人は本当、要注意人物。
私のことでここにいることはわかっているけど、それを気にしていると嫌になってくるので、そこは深く考えずにパソコンと向き合う。
『森良子のカルテは一読しました。引き続き佐藤先生の主治医でも、僕の力になれることがありましたら、おっしゃってくださいね。』
石川先生が幸治さんに森良子の今後について話している。
『よろしくお願いします。
彼女は誰かさんと同じ匂いがしますので、石川先生にもご協力いただく時が必ず来ると思います。
仕事中も一緒になることがあると思います。
体調に関して何かありましたら、そちらもよろしくお願いします。』
そんなことを幸治さんは他の先生にお願いしてたんだ。
きっと・・・・・私の時も・・・
『かなも彼女のカルテ見るか?』
幸治さんにそう言われるけど、私は・・・
『いえ、見るのはやめておきます。
ここにいた時の病状は把握してますが、今は主治医でもありませんし・・・
必要な時は見ますが・・・・その・・・。
彼女とは医師と看護師、入院中の友達?みたいな。
そしてきっとこの先も女子会なんかで集まって、心情を話し合える仲になれると思っています。
私が医者の目で彼女の話を聞いてしまうと、彼女は心に秘めたことを話せなくなるに違いありません。
なので、必要となるその時まで、私は彼女の友達として、職場の同僚として、接していきたいと思っています。』
そういうと、幸治さんの隣にいた進藤先生が、
『ほんと・・・・・・・
かなちゃんが・・・・・
僕のかなちゃんが・・・・
どんどん大人になってしまって。』
涙目になりながらつぶやいている。
『治療に関することで必要なことなら、俺たちに必ず話してくれよ。』
「はい、わかりました。」
全てを話せるかは、彼女に聞いてからにするけど、必要となればそうするだろう。
幸治さんと石川先生の表情からは、良子ちゃんの病状が心配されていることはよくわかった。
近いうちに二人になれたら、それとなく聞いてみようかな。
そんなことを考えながらパソコン入力を終えた。