未知の世界7

就業時間が過ぎて、病院を出たと良子ちゃんからメールをもらった。




よし!間違いなく怒鳴られるだろうけど、いざ!!




「石川先生、佐藤先生、今からお時間よろしいでしょうか。」




かなちゃんの主治医は幸治さんだけど、石川先生も一緒に治療していくと言っていたし、何せ今から怒られるだろうから・・・




私と幸治さん以外に、一人いてくれたらまだいいかなって。





幸治さんに私の椅子に座ってもらって、いざ。





「あの、森良子のことですが。




今日話を聞けましたので、そのご報告を。」




もう聞けたのかという驚いた顔のお二人。



今から話すことを聞いたら、もっと驚くに違いない。




「彼女、ここの病院を出たあと、紹介してもらった病院ではなくて、町のクリニックに行ったと言ってましたが、それは嘘でした。」





『えっ!?』




声にならない声の幸治さん。




「看護学校に入ってから、一度も病院に行ってないそうで。



学校在学中に入院になってしまったら、学校を卒業できないって。




それから一年ほどはよかったけど、学校で他の子たちと同じ食事をしたり、授業である体育に参加していたせいか、、、




一年ほど前から、胸が苦しくなることが多々あったようです。



ここに入院中よりも痛みは低いそうですが、今さら病院にも行けなくて、一人で抱え込んでいたようです。」





これが彼女の症状です。聞いたことをすべて書き留めておきました。




彼女の願いとしては、看護学校を卒業してから健診をしたい、入院となることはわかっているので、それも卒業後にお願いしたい、とのことです。」





『それでお前はどう思うんだ?』





石川先生が私の意見を聞く。





「友達として彼女の意見を100パーセント私の希望としたいのですが、医者としては、学校卒業前に、いえ、すぐにでも健診して、入院治療するべきだと思います。」





『そうだな。それで森良子は今どこに?』





「実は・・・その・・・」




言いにくいけど、




「既に就業時間が終わり、寮に戻っています。」





『はぁ!このばか!』




やはり来た幸治さんからのお叱り。





「そういわれると思っていました。




ですが、それも意味があります。」




『なんだ?それは。』




と石川先生。




「彼女は看護学校で親同然に面倒を見てくれている先生がいるそうです。



まずはその人に、自分の体のことを話してきなさいと言いました。



もし先に診察を受けて、実習中の看護師長が知り、そのあとに人づてに彼女の体について看護学校の先生が知ったとき。





看護学校の先生をとても傷つけてしまうのではないかと、話しました。




すぐに先生方に話さなかったのは、私の責任です。」




椅子に座っている二人に頭を深く下げた。




『分かった。それなら明日出勤してきたら、彼女を外来で診察するから。




学校を卒業してからと言われたが、それはできない。この症状から間違いなく入院にはなるだろう。



だけど、あと二週間実習させて、なおかつ卒業まで待つなんて、いつ心臓が止まってもおかしくない状態になってしまうから。




それは医者として絶対に譲れない。』






そうだよね・・・彼女は卒業できないのかな・・・




『よし、それならばここは、わしがでることにしよう!』



と知らない間に席に座っていた医局長。




周りを見渡せば、小児科医局には全員の先生がそろっている。




私の話をみんなが耳を傾けて聞いていた。



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