未知の世界7
はっ!
と気配を感じて目を開けると…
『よく眠っていたね。』
高い鼻が私の鼻に付くのではないかというくらい近くで、ジャクソン先生。
「……はい。
……ゲホッ」
とジャクソン先生の顔をよけながら咳が出る。
『結構長く眠っていたけど、夜に眠れなくなるよ。』
そう言われて部屋の時計をみると、
「…えっ!?」
もう夕方…。
目をやった時計は、日本から孝治さんが持って来てくれたもの。
そう、私が初めて孝治さんに会って、入院した時に私の病室に持ってきてくれた置き時計。
実はあれから、入院するたびに持ってきてくれる。
今回、手術となり、アメリカまでわざわざ持ってきてくれた。
あの時計だけは何も変わってない。
『ん?』
同じようにジャクソン先生は時計に目をやりながら、私の頬に手をやり、リンパを確認する。
寝起きの私がぼーっとしている間に、すかさず聴診器を胸元に当てる。
長い長い聴診……
目の前にあるジャクソン先生の顔の後ろの天井を見ていると、再び睡魔に襲われそうになる。
『かなっ!かなっ!』
声をかけられ目を覚ます。
眠い…
『今日は消灯まで、ここで仕事しようかな。』
と呟くジャクソン先生。それはいつか日本で入院していた時に、お父さんがやっていた…
「いえ、ちゃんと起きていられますから!」
そんな言葉を聞いたら、しっかり目が覚めた。
『次に来た時に寝ていたら、消灯までここで仕事するからね。』
「は、はい…。」
それだけは勘弁して欲しい。
心を許したジャクソン先生だけど、ずっと見られているのはきついことを、日本で経験済みだから。
そんなやりとりをして、ジャクソン先生は部屋を後にした。