未知の世界7
『かなちゃん、どうだい?




目眩は出てないかい?』





仕事が終わり、食事の時間に帰ってこれたお父さんから聞かれ、






「今のところありません。もうあんな想いしたくないです…。」








『いや、それ以上に辛い想いしてきてるはずだけどな。』






すかさず孝治さん。






たしかに…だけど、







「他も辛いけど…メニエールは地味に辛いと言うか…





普通の状態で居られないのが、すごい辛いです。」







『というのは?』






お父さんが不思議そうに尋ねる。






「うーん…心臓の発作は、たしかに苦しくて締め付けられる痛みがあります。





ただ、その時って一時的なものです。





喘息発作はそれ以上に長いけど、持ち直すこともできるし、危険ですけど、酷ければ気を失ってしまいます。






けど…メニエールは見た目の状態から、人には全くわからなくて、それでもずーっと目が回って、吐き気までして…







元気そうなのに中身が、しかも長期間に渡ってしんどいので、辛い時間はとても長いです。」






『そういうこと…。』







「なので、どれが辛いかと言うと、全て辛いけどその中でもメニエールが一番しんどいような。」






『ほんと、病気ってなってみないとわからないものね。』






お母さんがそう答えた。








「ならないに越したことはないですよっ。」






と伝えると、それはそうね…ってお母さんは納得していた。






『しかし、かなちゃんは最強だな。』






「えっ?」






『患者さんの辛い気持ちを一番知っているんだから。』






お父さんが感心している。






『それ以上に、逃げ方も知ってるからな。





大抵、今うちの病院で逃走する子供たちは、かなの頭の中でどこにいるかわかってるから、すぐに捕まるよな。』






『たしかに…そうだな。』






お父さんと孝治さんはそう言うと笑っていた。






褒められたのか…けなされたのか…





楽しい休日は終わり、明日からまた仕事。





筋肉痛も一日で寛解してきた。





明日からも頑張ろっ。
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