未知の世界7
健診
そして今日はお休みを取って…健診。
『はいはい、早くやって早く帰れるように頑張るぞ。』
と嫌そうな顔しているであろう私に、早く椅子に座れと促す。
「はい…」
いつものように慣れた手つきで聴診を私の胸に当てて、ゆっくり聴診する石川先生。
『大きく吸ってみて…大きく吐いてー。』
咳き込むことなく落ち着いて呼吸をした。
『次は背中。』
心臓だけじゃなくて一緒に肺まで診てくれるのは、常に私のそばで仕事してくれてるからだなとありがたく思う。
リンパ、喉…と確認して、その場で採血した後に心電図やエコーを黙々とこなす石川先生。
もし私が…子供なら。
もっと明るく接してくれるのかな?
と思うほど、真剣な眼差し。
逆にドキドキしてしまう。
『なんだよ、そんなにジロジロ見て。』
「いや…その。
私が子供ならもっと楽しくやってくれるのかなって。」
『………悪かったな。つまらない健診で。』
「いやっそうじゃなくてっ!」
と慌てて訂正してみる。
『はい、かなちゃん。お胸の様子を知りたいから、大人しくしておこうねー。』
完全に子供扱いされる。それもそれで恥ずかしい。
「は、恥ずかしい。もういいですから…。」
『お前はすぐに不安定な気持ちがここに出るからな。』
と胸を指差す。
そう?そうだったかな。
『前に、不安になり過ぎて何度もエコーや心電図のやり直しがあっただろ?
嬉しい時の顔は出にくいけど、嫌そうな顔もすごいぞ。
それがここにも伝わるから、健診の時は不安にさせないようにしてるつもりだったが…
これからは、楽しくやりまちゅねー。』
「もーホントにやめてください!
私が悪かったです。」
笑いながら言うと、
『はいはい、じゃあ静かにしててくれるかな。』
と真顔に戻ったので、
若干ニヤけながら、大人しくしていた。
『よし、こっちは終わりだ。
いつになるか分からないけど、心筋カテーテル検査もするからな。』
そうか…細胞を入れてから、心臓の状態は外からしか見ていなかった。
そろそろなのかな。
『ジャクソン先生が是非日本に来て、佐藤の心臓の様子を知りたいというので、もしかしたら、ジャクソン先生にやってもらうかもしれないけどな。』
そうだった、石川先生はもともとあちらにいた方だったんだ。
「ジャクソン先生ですか。」
孝治さんがイライラしないといいけど。
『じゃあ次は、進藤先生のところへどうぞ。』
ゆっくり体を起こしながら、お礼を言う。そんな時にも背中を支えてくれる石川先生の優しさは、本当に患者さんを考えた優しい医者なんだと、顔からは感じないけど、思った。