未知の世界7
散々飲んで、食べて、騒がしくして…ベロベロに酔った医局の先生方。
この中でシラフなのは私と裏当直の先生の数人だけだろうな。
そんなことを思いながらトイレへ向かうと、反対から歩いてきたのは石川先生。
いつもは釣り上がった目つきなのに、飲みすぎて垂れ目になっている。
「だいじょーぶか?さとう。」
それは私のセリフです。という言葉を口には出さず
『大丈夫ですよ。おかげさまで美味しいドリンクもたくさん飲めました。』
そういうとスッと私の頭に手が伸び、
「そっかそっか…本当にさとうはかわいーなー」
『はいっ!?』
石川先生の言葉にただただ驚いて立ち尽くしていると、その後ろで石川先生を羽交締めにしているのは早川先生。
「やめましょう、石川先生っ。佐藤先生に見られたら命はありませんよ。」
ニッコリ笑いながら細身の早川先生が石川先生を止める。
少し酔いが覚めたのか、
「悪い悪い」
と言いながら手を離す石川先生。
「少し飲みすぎちゃったみたいだね、石川先生。
かなちゃん、何も考えなくていいからね。」
今の発言を何度も頭の中で繰り返していたけど、分からない…困った顔をした私に、早川先生が去り際に声をかけた。
『は、はい。』
それから飲み会はお開きとなり、私は見た目はそんなに分からないけど、かなり飲んでるはずの孝治さんと二人で、タクシーに乗って帰宅した。