未知の世界7

そして喘息発作は落ち着き、心臓の方もみるみるうちに数値が良くなり、いよいよ退院となった。





『長い入院生活はどうだった?』






退院の手続き中、私の荷物を手にしているジャクソン先生が横から聞いてくる。





「う〜ん、私の中ではそんなに長くはないんです…。




ただ、研修ができなくて、もったいない感じですね。」






『ほんとにかなは真面目なんだな。
僕なら、入院のおかげで研修をさぼれて嬉しいって思っちゃうけどな。』





と笑いながら話すジャクソン先生。






「一年に何度もこういうことがあるので、私としてはいつまた入院するかわからないことが、ちょっと…」





『そうだよね。何度もだとこたえるよね。





っていうか、入院になるかどうかって、かなも医者なんだからわかるんじゃない?』






う……それはそうだけど…。






『担当患者には熱心だが、自分には全く興味なく、自分の体を大事にしないから、限界まで走り続ける。





って日本での仕事の評価に書いてあったよ』






「えっ!?」






ここに来て…石川先生……。







「前に同じことを言われました…」






『まぁその気持ちは分からないこともないけどね。




自分の体調を崩してから後悔するんだよねぇ。』






と私の気持ちが分かったような口振りのジャクソン先生だけど、私は後悔したことはない。






『ん?かなは後悔しないようだね。』






ひゃっ!なぜわかったんだろう。







『かなは痛い目を何度もみてきたのに、毎回忘れて、無茶するんだろうね。





もっと大事にしなきゃダメだよ。






僕の愛するかなちゃんっ。』





と肩に手を置かれて、まるでカップルのような態度だけど、そういう意味ではないと思う。







『よし、今日は家に送って行く前に、合鍵を作ったし、コテージに寄ってみようか?』









ということで、私とジャクソン先生はコテージに寄ってから、お母さんの待つ家に向かうことにした。

< 8 / 100 >

この作品をシェア

pagetop