未知の世界7
そして喘息発作は落ち着き、心臓の方もみるみるうちに数値が良くなり、いよいよ退院となった。
『長い入院生活はどうだった?』
退院の手続き中、私の荷物を手にしているジャクソン先生が横から聞いてくる。
「う〜ん、私の中ではそんなに長くはないんです…。
ただ、研修ができなくて、もったいない感じですね。」
『ほんとにかなは真面目なんだな。
僕なら、入院のおかげで研修をさぼれて嬉しいって思っちゃうけどな。』
と笑いながら話すジャクソン先生。
「一年に何度もこういうことがあるので、私としてはいつまた入院するかわからないことが、ちょっと…」
『そうだよね。何度もだとこたえるよね。
っていうか、入院になるかどうかって、かなも医者なんだからわかるんじゃない?』
う……それはそうだけど…。
『担当患者には熱心だが、自分には全く興味なく、自分の体を大事にしないから、限界まで走り続ける。
って日本での仕事の評価に書いてあったよ』
「えっ!?」
ここに来て…石川先生……。
「前に同じことを言われました…」
『まぁその気持ちは分からないこともないけどね。
自分の体調を崩してから後悔するんだよねぇ。』
と私の気持ちが分かったような口振りのジャクソン先生だけど、私は後悔したことはない。
『ん?かなは後悔しないようだね。』
ひゃっ!なぜわかったんだろう。
『かなは痛い目を何度もみてきたのに、毎回忘れて、無茶するんだろうね。
もっと大事にしなきゃダメだよ。
僕の愛するかなちゃんっ。』
と肩に手を置かれて、まるでカップルのような態度だけど、そういう意味ではないと思う。
『よし、今日は家に送って行く前に、合鍵を作ったし、コテージに寄ってみようか?』
ということで、私とジャクソン先生はコテージに寄ってから、お母さんの待つ家に向かうことにした。