未知の世界7
朝となり、食事が運ばれてきた。
ということは入院してたってことか…
自分がどこにいるのかわからないまま、目を覚ました。
目の前の食事は昨日食べていたものよりも、塩分、糖分の控えられたもの。
それでも薬も飲まないといけないので、食べるか・・・
食前の薬をしっかりと飲み、食事に手を付けた。
家や仕事場では、自分の食事量は簡単に減らすことができるので、食べきることはできていた。
ただ、改めてこうやって出されると、自分の食欲のなさに驚かされる。
昨日までと食べている量は変わらないのに、今の私に必要なカロリー分の料理が、お皿の上に出されるとホント・・・食べれてないんだな。
そんなことと格闘していると、個室のドアがノックされるとほぼ同時に部屋のドアが開いた。
『おはよ』
入って来たのは幸治さんを先頭に、石川先生と進藤先生。
「おはようございます。」
『どれどれ?かなちゃん。昨日は熱が出たみたいだね。』
そういってベッド沿いの椅子に座るのは進藤先生。
『熱はどう?』
と体温計を手渡される。
忘れていたけど、熱と言われて鼻から出る息が熱いのは変わらない。
「たぶん・・・下がってはいないかと。」
『自覚症状があるってことは、相当しんどいね。』
相当ってことはないけど。
久しぶりの熱で体は思うようにいかない。
体温計の表示をみて、昨日と変わらないな、と呟いたのは石川先生。
『まずは熱を下げて、体の調子を整えてからの検査だな。』
そう話した後に、
『それでは進藤先生、後はお願いします。』
と石川先生。
『かな、ゆっくり休むんだぞ。ご飯もしっかり食べて。
俺たちは今からオペなんだ。』
という幸治さんに「あぁ、いいな。」と不謹慎ではあるが心の声が漏れてしまった。
2人はさっさと部屋を後にして、残された進藤先生は私の呟いた言葉に笑っている。
『かなちゃんの仕事好き、相変わらずだね。
とりあえず診察するね。』
そう言われ、それに合わせてパジャマのボタンを一つずつ外そうとするけど、
あれ?うまくいかない。
『いいよ、僕がやるよ。』
手際よく進藤先生にボタンを外される。
今さらながら、進藤先生の診察が最近はなかったからか、もしくは、いつもこういう時は看護師さんがやってくれるからか、ボタンを外されてなんだかドキドキ・・・。
『熱のせいで頭がよく動いてないんだね。
その手は一体・・・』
と言われて気づく。
進藤先生のボタンを外す手を包み込むように、なぜだか自分の両手で先生の手を握っていた。
「あっ!」
自分で自分が何してるのかわからないけど、パッと手を離した。
『じゃあ聴診するね。』
私の緊張をよそに、素早く聴診する進藤先生。
またそれも相変わらずのゆっくり。
気づくと目を閉じて眠っていた。
『かなちゃん?』
聴診もそのあとの診察も終わって起こされる。
『今日はゆっくり寝てね。熱が下がってから退院を考えよう。
その間にしっかり食事して、薬も飲んでね。』
再び目の前に食事を出される。
『はい。薬も飲むよ。』
そうだった・・・
家でお母さんと幸治さんに管理され過ぎているせいか・・・
入院中は逆に看護師さんも私が薬を飲み忘れるはずがないと思っているせいか、入院してすぐは管理されていない。
そのうち飲んでないことを叱られ、いつも看護師さんが管理することになるんだけどね。
気の進まない食事を少し食べ終えて、飲まなくてはいけない薬に手を付けた。
その間、ずっとそばにいる進藤先生。
「あれ?」
『うん、今日は僕休みなんだ。』
嬉しそうに微笑む進藤先生。
「え?」
『だから今日はここにいるからね。』
「え!?」
聞き返してしまった。しかも強めに・・・
『そんな嬉しそうな反応しないのっ。
白衣はこの部屋でしか着ないから。』
と言い、食事が終わった私に吸入の準備を始める。
『今日はここで仕事をさせてもらうから、気にしないでかなちゃんは寝ててね。
僕はかなちゃんの寝顔を久しぶりに見させてもらうねっ』
はぁ・・・・・なぜそんなに嬉しそうなのですか・・・・・
嫌だなと思いながらも、体は怠くて、吸入する前に眠りについて・・・