未知の世界7

朝ご飯の後に寝てしまい、次に目を覚ました時は、進藤先生にご飯を食べなさいって起こされた。






昨日、仕事していた時まではちゃんと時間を守って起きられたのに…







『ようやく起きたね…』







重たい瞼を開く。







『少ししたら、熱を測ろうか。』







お休みだというのに、私の専属の医師になっている進藤先生。






『水分も摂るんだよ。』







用意されてお昼ご飯のお盆に、経口補水液の入ったペットボトルを置かれる。








『寝ることも大事だけど、食べることも同じくらい大事。






最近減ってきてた食欲を、この入院で取り戻さないとね。』






そう言いながら私の頭を撫でる進藤先生は、なぜだか朝から嬉しそう。




「なんでそんなに笑顔なんですか?」





『そりゃそうでしょ。




ここ長いこと、かなちゃんをこんなふうに独り占めできなかったからねぇ』





進藤先生まで恐ろしいことをさらっと言う。







アメリカではジャクソン先生、日本では、先日の石川先生といい…私は孝治さんの妻なのに。









『はい、そろそろ体温測ろうねぇ』






ウキウキの進藤先生が手に持った体温計を受け取り、脇に挟む。








その間に食事の準備を進められる。







こんなにたくさん乗ってて、何時間かかっても完食できる気がしない。






『僕もここで頂きます。』





と温められたコンビニのお弁当。







「…唐揚げ弁当ですか?」








かなりのこってりなおかずが並ぶ。








『うん、たまにはこういうのもいいかと思って、コンビニで買ってきた。』








「普段は買わないんですか?」








一人暮らしの進藤先生。コンビニや外食も多いはず。







『もうこの年だから、コンビニよりも手作りしたご飯の方が、体に優しいんだよ。






でも、たまには若い頃を思い出してね。』







そう言って、コンビニ弁当の蓋を開けると、ガツガツ食べ始めた。








私はというと、目の前の薬を一粒ずつクリアしていくのに必死。







薬を飲み終えるだけで、お腹が満たされていく。








『早く薬飲んで、ご飯食べなよ〜』







「はい…」






そんなこと言われても…。







体温計が鳴ったけど、結局体温がいくつだったのか、進藤先生が体温計を私の脇から外したので
分からないまま。







『かなちゃんは幸治くんの食事をしっかりと作ってるよね。』








「はい。アメリカに行くまでの体調の良かった時は…」







今はお母さんがよく来ては家のことをしてくれているので、とても楽をしている。






「進藤先生は、どんなご飯を作るのですか?」








『僕?僕は日本料理はもちろん、たまには中華料理にフランス料理、イタリア料理と大したものはできないけど、自分が美味しいと思えるものはてきとうに作ってるよ。




まぁ、1人分ってかなり難しいけどね。』






ハハと笑いながら何ともない顔で言う。






「私はそこまで色々な料理は作れません。
幸治さんと暮らし始めて、それからお母さんから色々な料理を教わったけど、なかなかレパートリーが増えなくて。」







『なら、今度僕が教えてあげるよ。』








そんな会話をしながら、私は少しずつ食事を進めた。
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