未知の世界7
ピッピッピッピッ・・・・・・
目を覚ますと、ベッドに吸い付くほど重たい体と、熱い息が鼻から出ては、口に付けているマスクが白くなるのが目に入る。
それを目にして、また体は重くなる。
「はぁ・・・」
マラソンを完走した後のような爽やかさは一切ないけど、体の疲労感は同じくらい。
それをリアルに感じたのも、もう10年以上も前の話なんだけど。
久しぶりに発作を起こしたせいか、落ち着くことができず、パニックになったあの恐怖は、今思い出しても襲ってくる。
それと同時に咳をすると、横隔膜辺りが筋肉痛のように痛む。肋骨が折れてんのかな・・・って思うくらい痛い。
まだ眠たいけど、もし寝ているときになったら、寝る寸前になったら・・・なんて思うだけで、怖くて目をつむれない。
『入るよー』
ノックもなく一声だけで入ってきたのは、進藤先生。
その後ろには、石川先生と幸治さん。
『どう?落ち着いた?』
もう夜遅いのに、三人とも私のために残ってくれている。
「はい・・・。」
『久しぶりでしんどかったね。驚いた?』
「はい・・・。」
『残念だけど、検査は喘息が落ち着いて、体調が戻ってからの方がいいってことになったから。』
「・・・わかりました。」
入院が長引けば、私の受け持ち患者はどうなるんだろう。
私が復帰したころには・・・・・・・
そんな悶々とした思いばかり膨らむ。
『またそんな顔して・・・』
私の心の中に気づいたのか、石川先生がフッと笑う。
不気味な笑みに、こちらも笑ってしまう。
幸治さんを見れば、私を真剣な顔してみている。
それはこんなになって怒っているの?それとも、何か別のことを考えてるの?
分からない。
『ジャクソン先生には、佐藤先生が電話してくてるから。』
進藤先生に言われ、ジャクソン先生にまで迷惑をかけてしまったのかたと、不安になる。
『大丈夫だ。ジャクソン先生なら、延期と言っても、気にせず来るような人だしな』
ようやく口を開いた幸治さん。それは困るが・・・・と続ける。
「検査しないのに来ても・・・」
私が言うと、
『いや、ジャクソン先生は日本好きで、医者としても、アメリカの技術を教えるために、日本へ年に数回は来て、いろんな病院を回ってるんだぞ。』
「えっ!?」
石川先生の言葉に、あのジャクソン先生がそんなに日本に来ていることに驚いた。
『だから、何も気にせず、今はゆっくり休みなさい。
受け持ちの子たちも、きっと数日でみんな退院するだろうけど、通院は続くだろうしね。』
そう言ったのは進藤先生。
「はい・・・」
何もかもこの人たちにはお見通しなんだな・・・
『俺は明日当直だから、これから帰る。進藤先生も今日は休みだったから、帰るが、今日は石川先生が当直だから、これから診察を受けて、早く寝るんだぞ。』
そういうと、幸治さんと進藤先生は部屋を出ていこうとした。
「あ、あの・・・」
2人が立ち止まる。
「進藤先生、一日、ありがとうございました。」
私のために休みを犠牲にして一緒にいてくれて。
『いいえ、こちらこそ、かなちゃんの寝顔が見れてよかったよ。』
なんて、笑いながら部屋を後にした。