未知の世界7
私が物心つく前に、死んでしまったお父さんとお母さんの作った、コテージ。
中に入ると、どこか懐かしい匂いが立ち込める。
『かな、平気?』
後ろからジャクソン先生が聞いてくる。
「……はい、平気です。」
『そう?』
と言いながら、いつの間にか私の前に現れ、頬に伝う涙を手でぬぐうジャクソン先生。
「えっ?」
自分で触ってみると、知らない間に涙が流れていた。
『こういうのは、平気って言わないの。』
「はい…」
別に悲しい訳でもないし、懐かしい匂いを嗅いだところで、お父さんもお母さんも全く思い出せない。
ただ、お父さんとお母さんのことを考えたら、自然と涙が出てきた。
私は二人を思い出しても、なんら感情がないと思っていたけど、心は違ったのだろうか。
そんなことをジャクソン先生に抱きしめながら考える。
帰国したら、しばらくここには来られないだろうから、残りの研修は、ここに何度も足を運びたい。
『もっとここに慣れるように、頻繁に来たらいいよ。』
ちょうど同じことを考えていた。
「はい、そうします。
ただ、まだ一人で来るのは…」
『うん、もちろん一緒に着いて来るよ。』
どこまでも優しいジャクソン先生は私の額にキスをする。
ジャクソン先生を通して、まるでお父さんとお母さんにそうされているみたい。
ジャクソン先生の胸に身体を預けていると、次第に眠くなっていた。