女の恋愛図鑑
気付くのが遅すぎた。
大失恋をした事で、気付けた、愛する人の愛しさ。
けど、それも失ってしまった。
悔やんでも、どうにもならなかった。
あたしは劇の練習が忙しくなるのと同じスピードで、亀裂を埋めなければならないと思って、焦っている。
いつものように、食堂に行く。あたしのお母さんは超が付くほどめんどくさがりで、子供のお弁当をマメに作る派じゃない。
ふと、何気なく食堂に入ろうとしたら、入口の前で溶けて、こぼれそうなガリガリ君を1人で食べてる男の子がいた。
昼休みが始まったばかりで恐ろしいくらいいっぱい人がいるのに、彼だけ何だか風景と溶け込まず、主人公みたいに浮き立って見えた。
あっやば…見すぎてこっちに気付いてるみたい…
ハッキリとした、睫毛が揺れる瞳は吸い込まれそうなくらい、魅力的に見える。
普通なら目が合ったら外すあたしもこればっかりは、外せそうにない。
「ごめん、パン買うのめっちゃ並んでた。」
ともう一人の男の子が食堂から出てきて、彼の肩をぽんと叩いて声をかけた。
あ、2つ横のクラスのサッカー部の子だ。
彼はその友達と、あたしの横をすれ違う。
彼は何事も無かったみたいに、今度はあたしと目が合わない。