女の恋愛図鑑
付き合うと、何気に楽しい。

あぁ、この人が横であたしだけを見る笑顔はあたしのためだけに向けられたものなんだなぁとか、大事にしてくれることの幸せ、その一つ一つを噛みしめる作業が愛しい時間になる。

申し分ないと思っていた。


けど、その想いはちょっとしたことで崩れてしまう。


あの人なら、この時笑ったら八重歯が見えるはずだよなぁ…
きっとつないだ手はこれよりも、もう少しゴツゴツしていたはずだよなぁとか。

身代わり君はあたしをそんな気も無く傷付ける。

その微かな違いをまざまざと見せつけるだけだ。

決して亀裂を埋めるのではなくて、あの人なら、その人ならこうなはずなのに…
それを感じさせるに過ぎない。

思い始めたらあたしの心は加速して行った。

決定打は、あたしの体に触れた手。

好きなら当たり前のはずなのに、身代わり君は自分のアイデンティティで攻めてくる。
それは紛れもなく、大也自身。

感性が、触れられる事を拒絶する。
その瞬間、あたしは罪悪感に苛まれた。

大也という人間を通して、違う誰かを見ていた自分。
それをごまかし続けている自分。
大也自身の好きという気持ちを受け止めていない自分。
何もかも、見殺しになっている。
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