女の恋愛図鑑

あたしは浮かれ過ぎていたのかもしれない。
どんなにか、辛い気持ちになるなんて、気付くはずなかった。

2月15日、あたしは昨日のいきさつを部活の帰りに美紀に話す。美紀は部活とクラスが一緒で、秘密の恋を共有していた。

美紀は野球部キャプテンでクラスが一緒の田中君の事が好きなのだ。けれど、美紀はみんなに大っぴらに出来ない。田中君には1年生から付き合ってる野球部のマネージャーやってる彼女がいる。

みんなにお似合いだと言われて、そのマネージャーの優香ちゃんはめちゃくちゃかわいい。よく田中君は誕生日やらクリスマスののろけを、教室でするのだ。

それをほほ笑みながら横で聞く美紀はどんなに辛いだろう。

あたしはその気持ちを良く知っている。

美紀は2月に入って間もない頃、あたしにこう言った。

「バレンタイン…渡そうと思うの、田中君に。」
「そんな事したらバレちゃうじゃん!」
「田中君はあんな性格だから、マジに取らないと思う。でも、そうだとしても、自分の中で納得出来そうと思って…」

そうしな、とかやめときなとかあたしがとやかく言う次元ではない。美紀の意思の強さ、決心は揺ぐことはない。
彼女の瞳の奥は情念の炎が揺らいでいた。
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