女の恋愛図鑑
あたしは耐えられなくなって、雄志の気配が消えてしまわないうちにケータイで電話してしまう。
「あのね、あたし雄志のことが好きだよ。」
「…ありがとう。俺、佐知の事気になるけど、もう一人気になってる子がいて…」
美紀の事だ。
「誰?」
「いや、それは言えないけど…」
「いいじゃん、美紀の事でしょ?」
「えっ!知ってたんだ。」
雄志が自分で美紀の事をこの場面で出すって事は、つまりは雄志にとって美紀の方が好きということ。
「あたしじゃ…ダメなの?」
あたしは言葉が詰まってちゃんと言えない。頬につたう涙が風邪に吹かれて余計に寒い。
どこまでも諦めの悪いあたしを、冬の寒さと闇が全部を包んで消してしまいそうだ。
「ごめん…。」
雄志のこの一言で、どこにでもある片思いと三角関係は幕を閉じる。あたしという虚しい人間を独り残して。
すぐに家に帰れず、ホームの椅子に一人でいたら、あたしを呼ぶ声がした。
「佐知じゃん、こんな時間に一人で何してんの?」
こうちゃんだった。
こうちゃんはあたしのとなりのクラスだったけど、仲が良くていつも一緒にバカな事ばっかりしてる。