女の恋愛図鑑

バレンタイン当日、先輩は戸惑っていた。

「すっごい嬉しいけど、俺なんかがもらっていいの?」

「いっぱい作ったので、もらって下さい。」
笑顔で、渡さなければ。

やっぱりあなたは雲の上の人。

そしてもう一つ、あたしの強がりを入れた。
可哀相な女になりたくなくて、一途な女になりたくなくて。

あたしは左の薬指にフェイクを忍ばせて、先輩の前にいる。

先輩を好きなあたしを辞めたくて、意思表示したくて、指輪をはめた。

同じ指輪をした男は、世界中探してもどこにもいないけれど。

先輩は何も触れないけど、確実に気付いているだろう。
何も言わないのは、それで良かったとまんまと安心しているから?
あたしを永遠に妹にしたいから?

もう、どっちでもないから?

先輩はありがとうと行って去っていく。

また今度と言ったけど、無くてもいい。無いほうがいい。

だってあたしは、呆れるほど諦めが悪いから。きっと迷惑かけてしまうから。
先輩を手に入れたくて、でも無理で、最後は狂ってしまうかもしれない。


それから、あたしは先輩の影を探して、追い求めるようになる。
それは無意識で、だからどうしようもない。
あたしは一生こうなのだ。
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