それは鎖のように《短編》
私の手を包むように自分の手を被せる、彼。
「お願いだ。僕から離れないで」
「私は離れないよ。ずっと貴方の側にいるから」
私たちは静かに触れるだけの口付けを交わした。
これで何度目の同じ夜を過ごしただろうか。いつもと変わらない言葉や行為。
彼は多重人格、別名解離性同一性障害なのか、もしくはこれは彼の演技なのかは未だに分からないでいる。
いや、今更そんなことはどうでもいい。
私と彼との間に鎖があれば、彼が何であれ、どうであれ関係ないこと。