天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 私は慌てて兄さんの元に駆け寄って、
「藤助兄さん……? 藤助兄さん!?」

 何度も声をかけながら、兄さんの体を軽く揺すった。だけど一向に兄さんは目を覚ましてはくれない。

 私の声が二階にまで聞こえたのか、梅吉兄さん達がリビングにやって来た。

 うまく説明できない私に、だけど目の前の光景で理解してくれたんだと思う。桜文兄さんが藤助兄さんのことを、兄さんの部屋のベッドまで運んで、梅吉兄さんはお隣の石川さんの家に行って、お医者さんでたまたま非番で家にいた、石川さんの旦那さんを連れて来てくれた。

 旦那さんの話によると、藤助兄さんは軽い貧血で大きな病気ではないみたい。安静にしてれば、すぐに良くなるだろうと言ってくれた。

 大きな病気じゃなくて良かった。私は安堵の息をもらす。

 だけど。

 藤助兄さんがそこまで疲れてたなんて、倒れるまで気付かなかった……、ううん、気付いてあげられなかったなんて。

 情けない――。

 兄さん達も、きっとそう思ったんだと思う。

 だけど。

「道松が藤助のこと、扱き使ってばかりだから倒れたんだろう」

「なんだと!? どう考えても原因はお前だろ!」

「もう! 梅吉兄さんも道松兄さんも、ケンカしないでください!
 とにかく藤助兄さんが倒れちゃったんですから、代わりに家事をしないと!」

 ということで、みんなでくじ引きで分担を決めて、家の片付けをすることになった。
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