天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 私は急いで音のした方へ駆けて行く。その先は脱衣所で、扉を開けると、
「なっ、なっ……、なにこれ……!??」
 室内中の床一面が水浸しになっていた。その上、もこもこと大量の泡まで立っている。

「うげえー。なんだよ、洗濯機、壊れたのか? まあ、長年使ってるからな」

 ひょうひょうとした声の方を、私はキッと振り返る。

「梅吉兄さん、なにをしたんですか!?」

「なにって、普通に洗濯しただけだよ」

 梅吉兄さんは悪びれる様子もなく、けろりと言う。

 普通って……。普通にしてたら、こんな風にはならないよ!

「兄さん、一度に洗濯物を入れ過ぎです。しかも洗剤もたくさん入れたでしょう!?」

「たくさん入れた方が汚れもちゃんと落ちるだろう?」

「入れればいいってものじゃありません! 何事にも適量があるんです。それに、多過ぎると洗剤が濯ぎ取れなくなっちゃうんです!」

 梅吉兄さんは、そうなんだ、とまるで他人事だ。私は兄さんと一緒に水浸しになった床を片付ける。

 あーあ、また余計な仕事が増えちゃった。こんな調子で今日中に片付くかなあ。

 そう不安に感じる一方で、どうにか脱衣所の片付けと皿洗いが終わって。まだ掃除が残っていたけど、私は一度リビングで一休みすることにした。

 お茶を飲んで疲れた体を癒していると、外側から扉が開いた。その隙間から買い物袋を持った道松兄さんが入って来た。

「あれ、道松兄さん。その袋は一体……」

「なにって、夕飯の材料に決まってるだろう」

 そうだった。夕食作りは道松兄さんが担当だっけ。

「なにを作るんですか?」

「ビーフシチューだ」

「へえ、ビーフシチューですか」

 とってもおいしそう!

 道松兄さんは私の頭にぽんと手を乗せて、
「楽しみにしてろよ」
と言った。
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