天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
へへっ。夕食がビーフシチューなら掃除もがんばれるよ。
もう少し休んだら再開しようと思っていると、ふとキッチンの方から妙な匂いが漂ってきた。これは、お酒……、アルコールの匂い?
不審に思ってひょいとキッチンをのぞくと、道松兄さんが手に持っていたビンの中身をどばどばと鍋の中に入れていた。
「ちょっと、道松兄さん!? その手に持ってるのって……!」
「ああ? なんだよ。赤ワインがどうかしたのか?」
「『どうかしたのか?』じゃないですよ。なんでそんな物入れてるんですか!? ビーフシチューを作ってるんですよね?」
「なんでって、入れた方がおいしくなるからに決まってるだろう。隠し味には赤ワインだ」
「だからって、いくらなんでも入れ過ぎです! それに、そんなに入れたら隠し味には……」
「なりませんよ」そう私が言い切る前に、突如道松兄さんの背後から、ぼおっ……! と勢い良く火柱が上がった。その出所は鍋からで、火は天高くへと上がり続ける。
「ぎゃーっ!?? 火が、火がーっ!!
早く消さないと家が燃えちゃうーっ!」
「消火器だ、消火器! 早く消火器を持って来い!!」
数分後、どうにか鎮火できたけど――……。
「まさか人生で消火器を使うことになるなんて……」
思ってもいなかった。その上、消火器の使い方がよく分からなくて手間取っちゃって。結局、菖蒲兄さんが消火してくれた。
消火器の使い方、ちゃんと覚えておくんだった。避難訓練って本当に大事だと、今度からもっと真剣に取り組もうと、私は身をもって思い知らされる。
「道松兄さんも不器用だったなんて……」
「なにを今更。道松こそ、ドが付くほどの不器用だぞ。蝶々結びすらできないくらいだ。爪だって自分で切れなくて、いつもこっそり藤助に切ってもらっているしな」
「へえ、そうだったんですか」
全然知らなかったなあ。ていうか、梅吉兄さん、そういうことは先に言ってほしかったよ。
「ったく、道松のやつ、なーにが『楽しみにしてろよ』だよ。その自信は一体どこからくるんだか……」
「なんだとーっ!? お前だって洗濯失敗したくせに!」
「ああっ、もう! ケンカしないでくださいよっ!!」
結局、またまたまた仕事が増えちゃった。キッチンは見るに見兼ねた菖蒲兄さんも一緒に片付けてくれたけど、夕食は私が作ることになっちゃった。
もう少し休んだら再開しようと思っていると、ふとキッチンの方から妙な匂いが漂ってきた。これは、お酒……、アルコールの匂い?
不審に思ってひょいとキッチンをのぞくと、道松兄さんが手に持っていたビンの中身をどばどばと鍋の中に入れていた。
「ちょっと、道松兄さん!? その手に持ってるのって……!」
「ああ? なんだよ。赤ワインがどうかしたのか?」
「『どうかしたのか?』じゃないですよ。なんでそんな物入れてるんですか!? ビーフシチューを作ってるんですよね?」
「なんでって、入れた方がおいしくなるからに決まってるだろう。隠し味には赤ワインだ」
「だからって、いくらなんでも入れ過ぎです! それに、そんなに入れたら隠し味には……」
「なりませんよ」そう私が言い切る前に、突如道松兄さんの背後から、ぼおっ……! と勢い良く火柱が上がった。その出所は鍋からで、火は天高くへと上がり続ける。
「ぎゃーっ!?? 火が、火がーっ!!
早く消さないと家が燃えちゃうーっ!」
「消火器だ、消火器! 早く消火器を持って来い!!」
数分後、どうにか鎮火できたけど――……。
「まさか人生で消火器を使うことになるなんて……」
思ってもいなかった。その上、消火器の使い方がよく分からなくて手間取っちゃって。結局、菖蒲兄さんが消火してくれた。
消火器の使い方、ちゃんと覚えておくんだった。避難訓練って本当に大事だと、今度からもっと真剣に取り組もうと、私は身をもって思い知らされる。
「道松兄さんも不器用だったなんて……」
「なにを今更。道松こそ、ドが付くほどの不器用だぞ。蝶々結びすらできないくらいだ。爪だって自分で切れなくて、いつもこっそり藤助に切ってもらっているしな」
「へえ、そうだったんですか」
全然知らなかったなあ。ていうか、梅吉兄さん、そういうことは先に言ってほしかったよ。
「ったく、道松のやつ、なーにが『楽しみにしてろよ』だよ。その自信は一体どこからくるんだか……」
「なんだとーっ!? お前だって洗濯失敗したくせに!」
「ああっ、もう! ケンカしないでくださいよっ!!」
結局、またまたまた仕事が増えちゃった。キッチンは見るに見兼ねた菖蒲兄さんも一緒に片付けてくれたけど、夕食は私が作ることになっちゃった。