天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 コンコンと扉を軽くノックすると、中から、はいと短い返事があった。部屋の中に入ると、ベッドの中の藤助兄さんが上半身を起こし上げていた。

「ごめんね、牡丹。俺、寝ちゃってたみたいで。お腹空いたよね」

「ご飯作るね」と続ける兄さんに、私は首を左右に振る。

「いえ、夕食ならもう済んだので大丈夫ですよ」

「えっ……。そうなの?」

「はい。私が……というか、みんなと作って」

「そっか。ごめんね、牡丹」

「いえ」

 どうして謝るんだろう。兄さん、なにも悪くないのに。

 その疑問をぶつける代わりに、私は持っていたお盆をずいと兄さんの前に出して、
「ご飯食べられますか?」そう訊ねた。

「え……。もしかして、これ、牡丹が作ってくれたの?」

「はい。卵粥です」

 私の具合が悪くなると、お母さんがいつも作ってくれた、大塚家特製の卵粥だ。ふわふわ卵と鳥ササミ、三つ葉とネギに、それから刻みのりを散らした具沢山のお粥で。最後にちょこっとゴマ油を回しかけて……、そう、これが味の決め手なの。ゴマ油の香ばしい匂いで食欲もそそられる、栄養価満点のお粥なんだから。

 特に大好きな卵料理は、得意中の得意なんだから。

 私はレンゲで一口分すくうと軽く息を吹きかけ、少し冷ましてから、
「はい、口を開けてください」
 兄さんの口元に運ぶと、兄さんは、ぱくんと食べてくれた。

 もぐもぐと口を動かして、
「とってもおいしい……!」
 兄さんはまた一口、食べてくれる。
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