天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「家族ごっことは言ってくれるじゃねえか。まっ、俺達は別に構わねえけど、でもよう、牡丹。他に行く所なんてあるのか?」

「うっ!? そ、それは……」

 私はなにも言い返せない。すると梅吉さんは、まるでいたずらを企んでいる子どもみたいに、にっと嫌みったらしい笑みを浮かべる。

「だろう? だから、さ。ここで俺達とお前のいう家族ごっこをしながら親父が帰って来るのを待つのもありなんじゃないか?」

 にたりと白い歯をのぞかせる梅吉さんに、私はやっぱりなにも言えない。とっさに彼等から――半分だけ血が繋がっているらしい腹違いの兄弟達から視線を逸らした。

 いつまでも黙り込んだままの私を他所に、梅吉さんはまたしても口を開く。

「所で牡丹、お前、何歳だ? それから誕生日は?」

「歳ですか? 十六歳で、今年の春から高校一年生です。誕生日は六月ですが」

「十六歳!? へえ、てっきりまだ小学生くらいだと思ったのに……」

 梅吉さんだけじゃない。他のみんなも目を丸くさせている。

 分かってるもん、どうせ子どもっぽいって言いたいんでしょう? だけど私だって、背が低くて子どもっぽいの、気にしてるのに。

 むすうと眉間に皺を寄せていると、
「まあ、気にするなって。そういう子が好みの男だっているさ」

 もしかして、なぐさめてくれているつもりなのかな?

 そんな梅吉さんのことを藤助さんがひじで軽く小突いて、
「牡丹はかわいいよ」
と、いかにもなお世辞を言ってくれる。
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