天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「さあ、始まりました! 幸せ家族策略の時間です。今夜はなんと! 生放送スペシャルですよ。果たして、今宵も幸福の訪れる家族は現れるのでしょうか」
――とテレビ局のとあるスタジオで、軽快な音楽とともにオープニングが流れ出す。そんな華やかな表舞台を私は薄暗い舞台袖からのぞき込む。
緊張している私とは反対に梅吉兄さんは、
「ははっ、俺達の出番はまだまだ先だ。気楽に構えようぜ」
と、いつも通りだ。能天気な様子で私の背中を景気良く叩いた。
そんなこんなで収録も順調に進んでいき――。
「二番目のご家族の挑戦も残念ながら失敗に終わってしまいました。
最後は、エントリーナンバー三番・天正家のみなさんの挑戦となります」
と私達天正家の面々は、ようやくスタジオにお呼ばれした。
「それでは、ご家族のご紹介の方に移りましょう。みなさんは八人兄弟なんですよね。すごいですね。今のご時世、なかなかいませんよね」
「あはは。兄弟といっても、みんな母親はバラバラですけどね」
「えっ? バラバラということは……」
「はい。俺達、異母兄弟なんです。親父が異常なほどの浮気性でして。母親はそろって他界していて、そんで問題の親父は行方不明。なので親父の知り合いに引き取られて、兄弟仲良く暮らしてるんです」
「困った親父ですよね」と梅吉兄さんは軽快に笑うけど、一方の司会者は苦い顔をしている。
見かねた藤助兄さんが、梅吉兄さんをひじで小突いた。
「ちょっと、梅吉。司会の人が反応に困ってるだろう」
「本当のことなんだからしょうがないだろう。
それよりもだ。あの、ちょっとカメラをお借りしてもいいですか?」
「え? ええ、構いませんが……」
「ありがとうございます。ほら、牡丹。今がチャンスだ」
ぽんと梅吉兄さんに肩を叩かれ、私は一瞬意味が分からなかったけど、兄さんの意図に気が付くと小さくうなずいた。
すうと息を吸い込み、吐き出して。
そして。
「い……、いつまでもふらふらしてないで、いい加減、帰って来なさい、おとーさーんっ!!!」
とカメラに向かって思い切り叫んだ。
しんと静まり返っているスタジオで、ぜいはあと私の呼吸の音だけが小さく響き渡った。
――とテレビ局のとあるスタジオで、軽快な音楽とともにオープニングが流れ出す。そんな華やかな表舞台を私は薄暗い舞台袖からのぞき込む。
緊張している私とは反対に梅吉兄さんは、
「ははっ、俺達の出番はまだまだ先だ。気楽に構えようぜ」
と、いつも通りだ。能天気な様子で私の背中を景気良く叩いた。
そんなこんなで収録も順調に進んでいき――。
「二番目のご家族の挑戦も残念ながら失敗に終わってしまいました。
最後は、エントリーナンバー三番・天正家のみなさんの挑戦となります」
と私達天正家の面々は、ようやくスタジオにお呼ばれした。
「それでは、ご家族のご紹介の方に移りましょう。みなさんは八人兄弟なんですよね。すごいですね。今のご時世、なかなかいませんよね」
「あはは。兄弟といっても、みんな母親はバラバラですけどね」
「えっ? バラバラということは……」
「はい。俺達、異母兄弟なんです。親父が異常なほどの浮気性でして。母親はそろって他界していて、そんで問題の親父は行方不明。なので親父の知り合いに引き取られて、兄弟仲良く暮らしてるんです」
「困った親父ですよね」と梅吉兄さんは軽快に笑うけど、一方の司会者は苦い顔をしている。
見かねた藤助兄さんが、梅吉兄さんをひじで小突いた。
「ちょっと、梅吉。司会の人が反応に困ってるだろう」
「本当のことなんだからしょうがないだろう。
それよりもだ。あの、ちょっとカメラをお借りしてもいいですか?」
「え? ええ、構いませんが……」
「ありがとうございます。ほら、牡丹。今がチャンスだ」
ぽんと梅吉兄さんに肩を叩かれ、私は一瞬意味が分からなかったけど、兄さんの意図に気が付くと小さくうなずいた。
すうと息を吸い込み、吐き出して。
そして。
「い……、いつまでもふらふらしてないで、いい加減、帰って来なさい、おとーさーんっ!!!」
とカメラに向かって思い切り叫んだ。
しんと静まり返っているスタジオで、ぜいはあと私の呼吸の音だけが小さく響き渡った。