天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「どうしたんですかね。なんだか急に裏方が騒がしくなったような……」

「ううむ……。どうやらあの噂は本当だったみたいだな」

「えっ、噂って?」

「この番組の成功率は三割程度なんだが、その三割の家族も大体が番組スタッフの関係者だという噂があってな。
 余程製作費をけちりたいんだろう。本物の視聴者から選ばれた家族のほとんどは、失敗に終わらせるんだよ。あと少しで賞品が手に入る所で、わざと難易度の高いゲームを用意してな」

「それでサクラにはクリアさせて、あたかも本当に賞品をあげているよう見せかけているんですね」

「そういうことだ。だから俺達の前に挑戦してた家族も、あと一歩の所で失敗してただろう。番組側は必死に攻防しているのさ」

 なるほど、そういうことだったのね。

 きっと梅吉兄さんの言っていることは本当で。番組の裏側を知り、不安は募っていくけど、それでも中継は続けられる。

「それでは、次のチャレンジに移ります。続いてのゲームはフラッシュ暗算です」

「フラッシュ暗算か。それじゃあ、ここは芒だな」

「えっ、芒にやらせるんですか? フラッシュ暗算って、画面に次々に表示される数字を足していくものですよね。芒にはむずかしくないですか?」
「なあに、見てなって」

 芒は、「はあい!」と元気良く返事をすると、ぴょこぴょこと飛び跳ねながらスタジオの真ん中へと移動する。

 そして、ぴょんと用意されたイスに飛び乗った。
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