天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「ははっ、元気だね。ちょっとむずかしいと思うけど、がんばってね。
 問題は全部で十問。全て正解できればチャレンジ成功、一問でも間違えた時点で失格となります。
 それでは、まずは一問目」

 ぱっと、大きなスクリーンに数字が映し出された。ぱっ、ぱっと比較的ゆっくりとした早さで画面が切り替わっていく。

 なんだ、思ったより簡単だ。これなら芒でもクリアできそう。

「はい、それでは芒くん。一問目の答えをお願いします」

「25!」

「はい、正解です。続いて二問目です」

「69!」

「はい、またまた正解。それでは三問目……」
と問題が進むにつれ、表示される数字の桁数は増え、画面が切り替わる速度も徐々に上がっていく。だけど芒は表情一つ変えることなく、さらさらと答えていく。

「百十一、五百三、えっと、えっと……、ああ、もう分かんないやっ!
 芒ってば、よくこんなの解けますね」

 私なんて、もう画面に映った数字さえ読み取れないのに。

 そんな私の横で、梅吉兄さんは、ははっと笑う。

「こういうのは芒の十八番だからな。それより番組側もかなり躍起になってるな。
 見ろよ、裏で出題問題をいじってやがる。芒がただの小学生じゃないと分かった途端、難易度を上げて潰しにかかってきてる。子ども相手におとなげないなあ」

 兄さんの言う通り、スタッフ達は陰でこそこそと手を尽くすけど……。

「543687634」

「9086875268」

「3579121603822!」

 一方の芒には全く効果がないみたい。その甲斐もむなしく、画面はとうとう真っ暗になった。

「ねえ、おじさん。今の問題で十問全部終わったよね」

「ははっ、そうだね。全問正解、ゲームクリアです」

 にこにこと一抹の邪気もこもってない笑みを浮かべさせる芒に、司会者は未だ目の前で繰り広げられた偉業が信じられないのか。ぱちぱちと何度も瞬きを繰り返している。

「芒、良くやったぞ!」

 がしがしと梅吉兄さんに頭をなでられている芒を眺めながら、そう言えば前に美竹が、芒は天才小学生だと言ってたなと。私はふと、そんなことを思い出した。
< 118 / 164 >

この作品をシェア

pagetop