天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 こうして私の心配を他所にゲームは開始され――。

「いっえーい! 楽勝、楽勝!」

「おい、梅吉。調子に乗るな。集中力を乱すんじゃない!」

「なあに、これくらい。そういうお兄ちゃんこそ背中がお留守だぜ?」

「ばーか。わざと空けておいたんだよ」

「へえ、本当だ。息ぴったり……」

 藤助兄さんの言った通りだ。二人はいがみ合いながらも最低限の弾数で正確に敵を射抜き、どんどんステージをクリアしていく。

「ケンカしながら、よくあそこまで息を合わせられますね。それに射撃部の道松兄さんは分かりますが、梅吉兄さんまで上手なんて……」

「梅吉も弓道をやってるし、ゲーセンでもよく遊んでるから。ああいう的当てゲームは得意だよ」

「そう言えば、そうでしたね……って、もう最終ステージだ」

 気付けばゲームは佳境に入り、ラスボスとの決戦になっていた。

 だけど二人の勢いはとどまることを知らない。ものの数分で画面いっぱいに『GAME CLEAR!』の文字が表示された。

「さすが射撃部と弓道部のエースですね」

「ははっ、まあな。これくらい朝飯前よ」

 梅吉兄さんはすっかり得意気に、銃のトリガーに指をからめてくるくる回す。

「よし、次でいよいよ最後だな! あとは牡丹、全てはお前に懸ってるぞ」

「あの。さり気なくプレッシャーをかけないでくれませんか?」

「なあに、大丈夫だって」

 梅吉兄さんは、けらけら笑いながら私の背中を叩く。

「さて、いよいよ次が最後のチャレンジです! 泣いても笑ってもこれが最後。このゲームをクリアできれば、賞品は見事天正家のみなさんの物となります。
 果たして、勝利の女神は彼等に微笑んでくれるのでしょうか!? それでは天正家の最後のゲームはこちら、百人組手斬りです!」

「待て待て待ていっ!!」

「どうしたんだ、牡丹。素っ頓狂な声なんか出して」

「無理ですよ、百人組手なんて絶対に無理です!
 本当にこの番組の人達、私達を勝たせる気なんて微塵もありませんよ!?」

 絶対に無理だと私は声を荒げ、全身を使って非難する。

 だけど兄さん達は、
「無理でもなんでもやるしかないだろう」
 参加してないのは牡丹だけなんだから、と後を続ける。
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