天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 私が一人異議を唱え続けると、
「しょうがねえなあ。そんじゃあ、優勝したチームがなにか一つ命令できること。これならいいだろう?」

 なんだかまだ腑に落ちないけど、でも、さっきの景品よりは、ね。だけど梅吉兄さん達が優勝しちゃったら、結局添い寝させられそう。とにかく梅吉兄さん達には勝たないと……!

 なんだけど……。

「きゃっ……!?」

 私の顔の横を一筋の突風が吹き抜けた。ネットを隔てた先にいる菊は、
「ヘタクソ」
と私に向かって言い放つ。

 だって、卓球なんてそんなにしたことないんだもん。菊ってば、少しくらい手加減してくれてもいいじゃない。

 それに、桜文兄さんも卓球はあまり得意じゃないみたい。力が入り過ぎちゃうみたいで、アウトが多くて。私と桜文兄さんは、菊と芒ペアにすっかり翻弄されられる。

 あっという間に点を取られちゃって……。

「スマーッシュッ!!」
というかけ声とともに、渾身の一球が見事に決まった。芒はぴょんぴょんとその場で高く跳ねてみせる。

「わーい。やった、勝ったー!」

 あーあ、負けちゃった。悔しいけど惨敗だ。

 こうなったら梅吉兄さん達の対戦相手である、藤助兄さん・菖蒲兄さんペアに勝ってもらうしかない。

 そう思っていると、芒が私の顔をのぞき込んで、
「牡丹お姉ちゃん、どうしたの? 疲れちゃった?」

「疲れったっていうか……」

「お菓子あげるから元気出して。僕、部屋から取って来るね」

 そう言うと芒は、とたとたと一人卓球ルームから出て行った。

 私はその小さな背中を見送ると、藤助兄さん達を必死に応援する。

 だけど、その甲斐もむなしく……。

「よっしゃー! 決まったぜ」

 スパーン! と梅吉兄さんの放った一撃が台の端スレスレに入った。そ、そんな……。梅吉兄さん達が勝っちゃった。
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