天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
その後ろ姿を見送りながら、十年分は寿命が縮んだと。青菜に塩をかけたみたいに私の全身からまたしても力が抜けていき、へろへろと再び地べたにへたり込む。
誰もが安堵感に浸っている中、藤助兄さんは芒の元に駆け寄ると自身の方へと抱き寄せた。
「もう、芒ってば。勝手にいなくなったらダメだろう。心配したんだからー!」
「お兄ちゃん、ちょっと待って。この子がつぶれちゃう」
「えっ、この子って?」
なんのことかと藤助兄さんが首を傾げさせると同時、芒の胸元から、ぴょこんとなにかが飛び出した。
「うわっ!? びっくりした。えっと、これってもしかして……」
瞬きを繰り返す藤助兄さんと同じように、見つめる先の円らな瞳も兄さんの真似でもしているみたいに、ぱちぱちと何度も漆黒色の眼を開け閉めさせる。
突然目の前に現れた茶色の毛玉に、藤助兄さんはきょとんと目を丸くさせたまま。まるで自分に言い聞かすように、
「これって、タヌキ――……?」
ぽつりと口先で呟いた。
誰もが安堵感に浸っている中、藤助兄さんは芒の元に駆け寄ると自身の方へと抱き寄せた。
「もう、芒ってば。勝手にいなくなったらダメだろう。心配したんだからー!」
「お兄ちゃん、ちょっと待って。この子がつぶれちゃう」
「えっ、この子って?」
なんのことかと藤助兄さんが首を傾げさせると同時、芒の胸元から、ぴょこんとなにかが飛び出した。
「うわっ!? びっくりした。えっと、これってもしかして……」
瞬きを繰り返す藤助兄さんと同じように、見つめる先の円らな瞳も兄さんの真似でもしているみたいに、ぱちぱちと何度も漆黒色の眼を開け閉めさせる。
突然目の前に現れた茶色の毛玉に、藤助兄さんはきょとんと目を丸くさせたまま。まるで自分に言い聞かすように、
「これって、タヌキ――……?」
ぽつりと口先で呟いた。