天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「ううんと、つまりさ。牡丹が家を出て来た理由って、萩のことを――足利家のことを兄弟達に知られたから……でいいの? お兄さん達との生活が嫌になったとか、前の家に帰りたくなったからじゃないんだよね」

 こくんと私がうなずくと、美竹は、
「そのことで、お兄さん達になにか言われたの?」
とまた訊ねる。

「ううん、そんなことは……」

 と言うよりも、その前に家を出て来ちゃったから。兄さん達はどう思ったんだろう。今更ながら私は手の中のアイスをぼうっと見つめるけど、もちろん答えなんか出てこない。

 ちっとも考えがまとまらぬ内に、美竹がまたもや口を開く。

「所でさ、萩はどうして牡丹の所に来たの?」

「えっ。どうしてって……」

 そう言えば萩は、どうして来たんだろう。私を連れ戻しに来たって言ってたけど、でも、なんで……。

 大体、私のことなんか嫌いな癖に。確かに萩は最後まで私が家を出ることに反対してはいたけど、でも、結局その理由も分からないまま出て来ちゃったんだっけ。

 本当にどうして……。

 またうだうだと考え込んでいると、美竹は、
「ねえ、今からでも遅くないんじゃない?」

「遅くないって、なにが?」

「だから、足利家のこと。牡丹は足利家を出て、今は天正家の人間になったけどさ。でも、牡丹にとっては大切な人達だったんでしょう? 萩だって、わざわざ牡丹を連れ戻しに来たくらいなんだから。
 ちゃんと話し合えばいいんじゃない? 結局さ、お互いに分かり合うには一番手っ取り早いというか、なんだかんだ、それしかないんだよね。
 ちゃんと話し合えばいいんだよ」

「問題は話し合えるかだけどね」と美竹は一言付け加える。
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