天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
そのまま奥の食卓に着くと、エプロン姿の藤助さんが、ことんと私の前に茶碗によそったばかりで湯気の立っている白米とお味噌汁を置いてくれた。
私が天正家に来てから数日が経つけど、分かったことがいくつかある。
例えば、天正家四男・藤助さん――。
藤助さんは家事一式を取り仕切っていて、それに加えて財政の管理もやってるみたい。天羽さんは仕事で出張していることが多くて、ほとんど家にはいなくて。だから天羽さんに代わって藤助さんが家の管理をしている。つまり天正家の財布は藤助さんが握っているも同然なんだって。
正直に言えば、藤助さんは私より料理が上手。ううん、藤助さんの作るご飯は、とってもおいしい。まるでプロの料理人みたい。
ずずう……と温かい味噌汁をすすっていると、突然、バンッ! と鈍い音が室内に響いた。
「おい、どうしてもっと早く起こしてくれなかったんだよっ!」
扉の方を振り向くと、きゃあきゃあと声を上げている芒を脇に抱えた梅吉さんの姿があった。梅吉さんは、ぽーんと芒を放り投げると、バタバタと室内を慌ただしく駆け巡る。
「ええと、カバン、カバン! それとジャージも。ああっ、もう! カバンどこいった!?」
「梅吉、ほら、カバン。俺は何度も起こしたよ。それなのに梅吉が、『あと五分……』って、なかなか起きなかったんだろう。牡丹の悲鳴だって聞こえてなかったでしょう。
お弁当と、それから、これも。お握りを作っておいたから隙を見て食べなよ」
「ああ、藤助。いつも悪いな」
梅吉さんはお弁当袋を藤助さんから受け取ると、飛び出すようにして家から出て行った。
天正家次男・梅吉さん――。
梅吉さんはお調子者で、だらしなくて。見た目通り軽くて、いっつも藤助さんに怒られてばかりだ。だけど気さくで話しやすくて、天正家のムードメーカー的存在かな。
梅吉さんがいなくなって、まるで嵐が過ぎ去った後みたいに室内はすっかり静まり返る。
私が天正家に来てから数日が経つけど、分かったことがいくつかある。
例えば、天正家四男・藤助さん――。
藤助さんは家事一式を取り仕切っていて、それに加えて財政の管理もやってるみたい。天羽さんは仕事で出張していることが多くて、ほとんど家にはいなくて。だから天羽さんに代わって藤助さんが家の管理をしている。つまり天正家の財布は藤助さんが握っているも同然なんだって。
正直に言えば、藤助さんは私より料理が上手。ううん、藤助さんの作るご飯は、とってもおいしい。まるでプロの料理人みたい。
ずずう……と温かい味噌汁をすすっていると、突然、バンッ! と鈍い音が室内に響いた。
「おい、どうしてもっと早く起こしてくれなかったんだよっ!」
扉の方を振り向くと、きゃあきゃあと声を上げている芒を脇に抱えた梅吉さんの姿があった。梅吉さんは、ぽーんと芒を放り投げると、バタバタと室内を慌ただしく駆け巡る。
「ええと、カバン、カバン! それとジャージも。ああっ、もう! カバンどこいった!?」
「梅吉、ほら、カバン。俺は何度も起こしたよ。それなのに梅吉が、『あと五分……』って、なかなか起きなかったんだろう。牡丹の悲鳴だって聞こえてなかったでしょう。
お弁当と、それから、これも。お握りを作っておいたから隙を見て食べなよ」
「ああ、藤助。いつも悪いな」
梅吉さんはお弁当袋を藤助さんから受け取ると、飛び出すようにして家から出て行った。
天正家次男・梅吉さん――。
梅吉さんはお調子者で、だらしなくて。見た目通り軽くて、いっつも藤助さんに怒られてばかりだ。だけど気さくで話しやすくて、天正家のムードメーカー的存在かな。
梅吉さんがいなくなって、まるで嵐が過ぎ去った後みたいに室内はすっかり静まり返る。