天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 そして最後にリビングに入って来たのは、一ミリの狂いもない精巧な顔立ちをした男の子だ。さらさらの栗色がかった髪に白い肌、それから氷みたいな瞳を揺らして自分の席に着く。

 天正家六男・菊――。

「藤助お兄ちゃん。僕、もう行くね」

「うん、いってらっしゃい。忘れ物はない?」

「大丈夫。それじゃあ、いってきまーす!」

 芒は元気良く返事をすると、ぴょこぴょことランドセルを軽く揺らしながらリビングから出て行く。

 天正家七男・芒――。

 天正家唯一の小学生で、年相応の活気さに愛くるしい笑みをいつも振りまいている。毎朝、兄さん達を起こして回るのが芒の役目みたい。

 そして、私がこんな天正家の長女だそうで――……。

 この家に来てから数日が経過するけど、この家の生活にはまだ慣れない。おまけに……。

 ちらりと菊と目が合うと、
「なにじろじろ見てんだよ、ブス!」

「なっ……、ぶ、ブスって……!」

 確かに私はアイドルみたいにかわいいって、自信を持って言える顔じゃないけど。でも、わざわざそんなことを言ってくるなんて、本当にやなやつ!

 菊はお人形みたいに整った外見とは反対に、性格に大いに問題がある。初めて天正家に来た日、菊との間にちょっとしたトラブルがあって。その時のことをまだ根に持っているのか、私はすっかり菊に嫌われている。

 菊は私と同い年だけど、私の方が誕生日が早いからお姉さんなんだって。そのことも菊に嫌われてる原因になってるみたい。

 だけど悔しいけど、顔のことでは菊にはとても敵わない。言い負かすことなんてできないよ。

 菊だけじゃなく兄さん達も、みんなそろって外見が良くて。本当にこの人達、私と血が繋がってるの? とは言っても、半分だけだけどね。それでも本当は間違いなんじゃないかなって思ってしまう。

 それだけじゃない。みんな、行方不明のお父さんのことは、どうでもいいみたい。私と違って無関心で、私一人だけがお父さんのことで躍起になってる。

 だからこの家で私だけ、なんだか仲間外れみたい。だけど私は決めたんだ、決めたんだから。
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