天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
そう決意を固めていると、突然藤助さんが、
「あっ」
と声を上げた。
「そうだった。牡丹、洗濯する物があったら、洗濯カゴの中に入れておけばいいからね。俺がするから」
「いえ。洗濯くらい自分でします」
藤助さんの申し出にそう返すと、藤助さんは、
「そう?」
と言った後、一寸考えた素振りを見せたけど、
「分かった」
と返事した。
そう──。私は一人で生きていくって、生涯結婚もしないで、一人だけで生きていくって。お母さんが死んじゃったあの日から、そう心に決めている。だから掃除だって洗濯だって、なんだって自分のことは自分でするの。
だけど、ふと視線を感じてそちらを向くと、怪訝な顔をした菊が私のことをじーっと見ていた。
どうしたんだろう。そう思っていると菊は、
「お前、バカ?」
またしても、そのきれいな唇から紡がれたとは思えないような言葉が出てきた。
「ちょっと、誰がバカよ!?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
「なんで私がバカなのよ!」
ブスは仕方ないけど、でも、バカは許せない!
私のどこがバカなのよと訊いても、
「そういう所がだよ」
なんて言って、菊はちっとも教えてくれない。
本当にやなやつ!
怒り任せに目玉焼きにかじりついていると、藤助さんが、
「牡丹は今日から学校なんだよね」
と訊いてきた。
「学校でなにかあったら俺達に言いなよ。俺と道松は三年二組で、梅吉と桜文は三組。菖蒲は二年一組で、菊は一年二組だから」
「みなさん、同じ学校なんですよね」
「うん。北総高校は家から近いし、伝統も多い学校だからね。校風も自由をモットーにしてて、生徒の自主性を尊重しているんだ。
……っと、いけない。もうこんな時間か。ほら、みんな。そろそろ家を出ないと」
カンカンと、藤助さんがフライ返しでフライパンを叩く。その音に急かされながら、私は残っている物を一気にかき込んだ。
そして椅子から立ち上がると、ぞろぞろと先行く兄さん達に続いて、私もカバンを片手に部屋を後にした。
「あっ」
と声を上げた。
「そうだった。牡丹、洗濯する物があったら、洗濯カゴの中に入れておけばいいからね。俺がするから」
「いえ。洗濯くらい自分でします」
藤助さんの申し出にそう返すと、藤助さんは、
「そう?」
と言った後、一寸考えた素振りを見せたけど、
「分かった」
と返事した。
そう──。私は一人で生きていくって、生涯結婚もしないで、一人だけで生きていくって。お母さんが死んじゃったあの日から、そう心に決めている。だから掃除だって洗濯だって、なんだって自分のことは自分でするの。
だけど、ふと視線を感じてそちらを向くと、怪訝な顔をした菊が私のことをじーっと見ていた。
どうしたんだろう。そう思っていると菊は、
「お前、バカ?」
またしても、そのきれいな唇から紡がれたとは思えないような言葉が出てきた。
「ちょっと、誰がバカよ!?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
「なんで私がバカなのよ!」
ブスは仕方ないけど、でも、バカは許せない!
私のどこがバカなのよと訊いても、
「そういう所がだよ」
なんて言って、菊はちっとも教えてくれない。
本当にやなやつ!
怒り任せに目玉焼きにかじりついていると、藤助さんが、
「牡丹は今日から学校なんだよね」
と訊いてきた。
「学校でなにかあったら俺達に言いなよ。俺と道松は三年二組で、梅吉と桜文は三組。菖蒲は二年一組で、菊は一年二組だから」
「みなさん、同じ学校なんですよね」
「うん。北総高校は家から近いし、伝統も多い学校だからね。校風も自由をモットーにしてて、生徒の自主性を尊重しているんだ。
……っと、いけない。もうこんな時間か。ほら、みんな。そろそろ家を出ないと」
カンカンと、藤助さんがフライ返しでフライパンを叩く。その音に急かされながら、私は残っている物を一気にかき込んだ。
そして椅子から立ち上がると、ぞろぞろと先行く兄さん達に続いて、私もカバンを片手に部屋を後にした。