天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
キーンコーンと甲高い鐘の音が校内中へと響き渡る。
私はその音を聞きながら半歩前を歩く先生の後をついていき、一年三組と書かれた表札を掲げている教室の中へと入った。そのまま先生に促されて教壇の脇に立つと、
「えっと、今日からこの学校に転校してきた、天正牡丹です」
よろしくお願いします、と定例文を続けさせて軽く頭を下げた。
そっか。私、もう“天正”なんだよね……。
自分で言っておきながら、だけど慣れるまで、まだまだ時間がかかりそう。
そんなことを思いながら私は先生の指示に従って、窮屈に並べられた机の間を通り抜け、窓際の一番後ろの空いていた席に腰を下ろした。
すると、
「ねえ!」
席に着くなり前の席に座っていた子がおさげ髪を揺らして、くるりと上半身だけを後ろに向けた。
それから、にこっと笑って、
「アタシ、与四田美竹って言うの」
よろしくね、そう言ってくれた。
「ねえ、ねえ。天正さんのこと、“牡丹”って呼んでいい?」
「別にいいけど……」
「それじゃあ、改めて。よろしくね、牡丹。アタシのことは美竹でいいから。
それでさ、牡丹の苗字って、“天正”でしょう? もしかして、あの天正なの?」
好奇心に満ちた視線を差し向けてくる美竹に、一瞬息が詰まった。
ああ、やっぱりここでも、“あの”が付くんだ。この子も、今までの人達と同じ──……。
「うん。多分、美竹の思ってる天正だけど……」
ちらりと美竹の顔を盗み見ると、だけど予想とは裏腹。美竹は、きらきらと瞳を輝かせていた。
それから、
「やっぱり! そうなんだ、すごい!!」
と、はしゃいだ声を出す。
私はその音を聞きながら半歩前を歩く先生の後をついていき、一年三組と書かれた表札を掲げている教室の中へと入った。そのまま先生に促されて教壇の脇に立つと、
「えっと、今日からこの学校に転校してきた、天正牡丹です」
よろしくお願いします、と定例文を続けさせて軽く頭を下げた。
そっか。私、もう“天正”なんだよね……。
自分で言っておきながら、だけど慣れるまで、まだまだ時間がかかりそう。
そんなことを思いながら私は先生の指示に従って、窮屈に並べられた机の間を通り抜け、窓際の一番後ろの空いていた席に腰を下ろした。
すると、
「ねえ!」
席に着くなり前の席に座っていた子がおさげ髪を揺らして、くるりと上半身だけを後ろに向けた。
それから、にこっと笑って、
「アタシ、与四田美竹って言うの」
よろしくね、そう言ってくれた。
「ねえ、ねえ。天正さんのこと、“牡丹”って呼んでいい?」
「別にいいけど……」
「それじゃあ、改めて。よろしくね、牡丹。アタシのことは美竹でいいから。
それでさ、牡丹の苗字って、“天正”でしょう? もしかして、あの天正なの?」
好奇心に満ちた視線を差し向けてくる美竹に、一瞬息が詰まった。
ああ、やっぱりここでも、“あの”が付くんだ。この子も、今までの人達と同じ──……。
「うん。多分、美竹の思ってる天正だけど……」
ちらりと美竹の顔を盗み見ると、だけど予想とは裏腹。美竹は、きらきらと瞳を輝かせていた。
それから、
「やっぱり! そうなんだ、すごい!!」
と、はしゃいだ声を出す。