天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「えっ。すごいって、なにが?」

「だって、あの天正家の一員なんでしょう」

「そうだけど……。私の兄弟のこと、知ってるの?」

「もちろん! 天正家のことを知らない人なんて、この学校にはいないよー」

 へえ、兄さん達って有名なんだ。

 そう思っていると美竹だけじゃなく、いつの間にかクラス中の女の子がこぞって私の周りに集まっていた。

「だって天正家の人達って、みんな、カッコイイんだもん……!」

 どの女の子の瞳もうっとりと、とろけていた。

「長男の道松先輩は高貴で気高くて、なによりあのクールな瞳がたまらない……! 射撃部のエースで、戦場の貴公子って異名があるくらいでしょう」

「道松先輩ももちろんいいけど、次男の梅吉先輩だって。ちょっとチャラチャラしてるけど、カッコイイんだよね!」

「三男の桜文先輩は柔道部の主将でしょう。とっても強くて負け知らずで。やっぱり男は強くないとよねー」

「私は四男の藤助先輩推し! 料理部部長で、先輩の作る料理はとってもおいしくて。それに、とっても優しいし!」

「五男の菖蒲先輩は頭が良くて、テストでは常に首席で。あの凛々しさがなんとも言えないのよねえ……」

「あと初等部にも歳の離れた弟がいるんだよね。芒くんだっけ? 芒くんも天才少年って騒がれてたっけ」

「そうなの? 家ではそんな風には見えないけど……」

 末っ子の家での様子をつい思い出していると、美竹は急にぐいと私の方に身を乗り出してきた。

「そんで六男の菊くんはね、誰も寄せつけなくて、一匹狼って感じかな? でも、そういう所がカッコイイんだよね」

 ふうん。菊ってば、学校でもそんな感じなんだ。

 やっぱりと思っていると美竹は、
「それに」
と一際大きな声を出して、
「菊くんは、なにより我が校の演劇部の期待の星なんだから!」

「えっ、演劇……? 演劇って、あの菊が?」

「菊くんの演技力はすごいんだから!」

「そう、そう。菊くんが出る舞台の公演チケットの倍率はめちゃくちゃ高くなるから、なかなか観れないんだけどね」

 へえ、あの菊が演劇部期待の星かあ……。確かにあの容姿ならステージの上でとっても目立つだろうし、王子様の役とか似合いそうだけど。あのつっけんどんな菊が演技なんて、全然想像できないや。
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