天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
あっという間に時は過ぎ――。
終業を告げるチャイムの音が校舎中へと鳴り響く。美竹は椅子から立ち上がると、ぐっと背筋を伸ばした。
「うーっ、やっと終わったー! さてと、これから部活か。
そう言えば牡丹は部活どうするの?」
「私は剣道部に入る予定なの」
「剣道部なら校舎裏に道場があって、そこで活動してるよ」
私は美竹と昇降口で別れると、彼女に教えてもらった通り校舎裏に回って行く。
だけど角を曲がると異様な光景が――、一人の女生徒の周りを数人の男子生徒が取り囲んでいる様が目に飛び込んで来た。
明らかに不審な様子に私の足はぴたりと止まる。肩下できれいに切りそろえられた黒髪の女生徒は、確か同じクラスの甲斐紅葉さんだ。なんだかおびえてるみたい。どうしたんだろう。顔が強張っていて、体も震えている。
すると男子生徒の一人が、甲斐さんの腕を強引に引っ張った。その途端、彼女の口から、
「いやっ……」
短い悲鳴がもれた。
「離してください!」
「いいじゃん、少しくらい付き合ってくれても」
「そーそー。減るもんじゃないんだからさー」
男子達の口から嘲笑が飛び交う中、甲斐さんの大きな瞳の端に薄らと涙が浮かび上がる。
それを目にした瞬間、気付けば私は無意識にも甲斐さんの前に躍り出ていて、
「あっ……、あの! 嫌がってるじゃないですか」
目の前の男子生徒達を思い切り睨み付けながら、そう言っていた。
終業を告げるチャイムの音が校舎中へと鳴り響く。美竹は椅子から立ち上がると、ぐっと背筋を伸ばした。
「うーっ、やっと終わったー! さてと、これから部活か。
そう言えば牡丹は部活どうするの?」
「私は剣道部に入る予定なの」
「剣道部なら校舎裏に道場があって、そこで活動してるよ」
私は美竹と昇降口で別れると、彼女に教えてもらった通り校舎裏に回って行く。
だけど角を曲がると異様な光景が――、一人の女生徒の周りを数人の男子生徒が取り囲んでいる様が目に飛び込んで来た。
明らかに不審な様子に私の足はぴたりと止まる。肩下できれいに切りそろえられた黒髪の女生徒は、確か同じクラスの甲斐紅葉さんだ。なんだかおびえてるみたい。どうしたんだろう。顔が強張っていて、体も震えている。
すると男子生徒の一人が、甲斐さんの腕を強引に引っ張った。その途端、彼女の口から、
「いやっ……」
短い悲鳴がもれた。
「離してください!」
「いいじゃん、少しくらい付き合ってくれても」
「そーそー。減るもんじゃないんだからさー」
男子達の口から嘲笑が飛び交う中、甲斐さんの大きな瞳の端に薄らと涙が浮かび上がる。
それを目にした瞬間、気付けば私は無意識にも甲斐さんの前に躍り出ていて、
「あっ……、あの! 嫌がってるじゃないですか」
目の前の男子生徒達を思い切り睨み付けながら、そう言っていた。