天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
放課後になって部活も終わり、薄紫色に染まっていく空に向かって、私は歩きながらもぐっと背筋を伸ばした。
今日の部活も疲れたな。お腹も空いた。夕飯はなんだろう。
あれこれ考えながら家に向かって歩いていると、ふと前方に見覚えのある姿が目に入った。
その人物――、菊は私に気が付くと、げっとあからさまに顔をゆがめ、そして歩くペースを速め出した。
「あっ、ちょっと……!」
なによ、人の顔を見るなり逃げるなんて。失礼しちゃう!
つい頭にきて、私も歩く速度を上げて菊の隣に並んだ。すると菊は、ますます眉間に皺を寄せた。
「ついて来るなよ」
「仕方ないでしょう、同じ家に帰るんだから」
だけど菊はむすっとした顔のまま、また足を速めた。
悔しくなって私も足を速めるけど、私が足を速めれば今度は菊が足を速め……。私達の歩く速度は自然と速まっていく。
ほんとーに、やなやつ! 絶対に負けるもんか。菊より先に家に着いてやる。
そう決意をした矢先、だけど急に菊が、
「あっ」
と声をもらして、
「そこ、毛虫が多いぞ」
「え……?」
私は思わず足を止めてしまった。そして、くるりと辺りを見回すと、ひゅーと一匹の毛虫が木の葉から糸を垂らして私の目の前に下りてきた。毛虫は、うにょうにょと全身を波打つみたいにして私の鼻先で動いた。
「きっ……、キャーッ!!」
やだ、やだ、やだっ!
私は無我夢中でカバンを振り回す。
私がここ一番の力を込めてカバンを振ると、その拍子にカバンに付けていた犬のキーホルダーが外れてしまい……。それは小さな弧を描きながら宙を飛んで、そのまま――、ぽちゃんっ! と池の中に落っこちた。
その光景に私の意識は一瞬停止した。
けど。
「あっ……。あ、あ、ああーっ!??」
ウソでしょう──っ!??
気付けば私は池の中に飛び込んでいた。幸い池は深くはなく、私の膝丈くらいしかなくて。私は腰を屈めると水の中に手を突っ込んで、落っこちてしまったキーホルダーを手探りで探す。
今日の部活も疲れたな。お腹も空いた。夕飯はなんだろう。
あれこれ考えながら家に向かって歩いていると、ふと前方に見覚えのある姿が目に入った。
その人物――、菊は私に気が付くと、げっとあからさまに顔をゆがめ、そして歩くペースを速め出した。
「あっ、ちょっと……!」
なによ、人の顔を見るなり逃げるなんて。失礼しちゃう!
つい頭にきて、私も歩く速度を上げて菊の隣に並んだ。すると菊は、ますます眉間に皺を寄せた。
「ついて来るなよ」
「仕方ないでしょう、同じ家に帰るんだから」
だけど菊はむすっとした顔のまま、また足を速めた。
悔しくなって私も足を速めるけど、私が足を速めれば今度は菊が足を速め……。私達の歩く速度は自然と速まっていく。
ほんとーに、やなやつ! 絶対に負けるもんか。菊より先に家に着いてやる。
そう決意をした矢先、だけど急に菊が、
「あっ」
と声をもらして、
「そこ、毛虫が多いぞ」
「え……?」
私は思わず足を止めてしまった。そして、くるりと辺りを見回すと、ひゅーと一匹の毛虫が木の葉から糸を垂らして私の目の前に下りてきた。毛虫は、うにょうにょと全身を波打つみたいにして私の鼻先で動いた。
「きっ……、キャーッ!!」
やだ、やだ、やだっ!
私は無我夢中でカバンを振り回す。
私がここ一番の力を込めてカバンを振ると、その拍子にカバンに付けていた犬のキーホルダーが外れてしまい……。それは小さな弧を描きながら宙を飛んで、そのまま――、ぽちゃんっ! と池の中に落っこちた。
その光景に私の意識は一瞬停止した。
けど。
「あっ……。あ、あ、ああーっ!??」
ウソでしょう──っ!??
気付けば私は池の中に飛び込んでいた。幸い池は深くはなく、私の膝丈くらいしかなくて。私は腰を屈めると水の中に手を突っ込んで、落っこちてしまったキーホルダーを手探りで探す。