天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 やっぱり私でも無理だったよ……。みんな、あんなに期待してたのに。明日、どんな顔をして会えばいいんだろう。

 でも、兄さんも受け取りもしないで突っぱねるなんて。せめて読んであげるくらいしてもいいんじゃない?

 道松兄さんは冷たい。

 そんなことを思っていると私の気持ちが伝わったのか、兄さんは、
「なんで知りもしないやつからの手紙を読まないとならないんだよ。どうせそいつ等、俺の顔だけが目当てだろう」

 あっ、顔が良いって自覚あるんだ。って、そうじゃなくて。確かに兄さんの言い分も一理ある。私だって全然知らない人から突然手紙を渡されても、そう簡単には好意を抱けないよね。しかも、一度にこんなにたくさんもだ。

 私ってば、女の子達の気持ちばかりを優先して、兄さんの気持ちは全く考えてなかった。考え足らずだった。

 私の口先から、
「ごめんなさい」
と声がもれる。

 すると兄さんは、ぐにゃりと眉を歪めさせて、
「なんでお前が謝るんだよ」
 一つ乾いた息を吐き出してから、
「別にお前が謝ることじゃないだろう」
ともう一度言った。

 それから兄さんは、なぜか私の頭に手を乗せた。兄さんの手、大きいな。そんなことを思っていると、今度はぽんぽんと軽くなでられた。

 なんだろう。頭の中がふわふわ? ぽかぽか? 安心するっていうのかな。不思議な気分。こんな気持ち、初めてで。

 私がその不可思議な感情に浸っていると、突然、私の手の中に残ったままの手紙の束がすっと抜き取られた。それは兄さんの手に移動していた。

 あれ。手紙、受け取らないんじゃなかったの?

 私が首を傾げさせていると、兄さんはあきれた顔をして、
「お前が文句言われるだろう」

「でも……」

「今回だけだからな。それと、周りからいいように使われるなよ」

 そう言葉を添えると、兄さんは自分の部屋の中に入って行った。
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