天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 日曜日――。

 今日は久し振りに部活も休みで、私は必要な文房具類を買いに駅前の大きなショッピングモールに出かけていた。

 久し振りの買い物で楽しかったなあ。本当は服も欲しかったんだけど……。特にあの花柄のワンピース、裾にさりげなくフリルが付いてて、とってもかわいかったなあ。

 なんて、いけない、いけない、ぜいたくは敵だ。お金は大切にしないとね。

 無事目的を達成した私は、軽い足取りで帰路を歩いていた。家まであと少し。公園の中を通っていると、突然、
「もし、そこのお嬢さん」
と声がした。

 お嬢さんって、私のことかな? 振り向くと着物姿のおじいさんが立っていた。私はもう一度辺りを見回して他に人がいないのを確かめてから、
「なんですか?」
と、おじいさんに問いかけた。

「天正という家を知らんかね。この辺りだと思うのだが」

「えっ。天正ならウチですが……」

「ウチだと?」

「はい。私、天正牡丹といいます」

 そうあいさつをすると、おじいさんはじろじろと私のことを眺め回した。きっとウチの中の、誰かの知り合いだろう。年齢的に天羽さんかな。

 そんなことを考えながら私はおじいさんを家まで案内する。

 だけど、おじいさんはむすっとしていて、口数が少なくてなんだか怖い。怒られている訳でもないのに、叱られている気分になってくる。

 でも、このおじいさん、誰かに似てるような……。

 誰だろう。私は考えるけど答えが出る前に、
「やはり、いい」
 おじいさんは急にそんなことを言い出すと足を止め、それからスマホを手に取って、どこかに電話をかけ出した。
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