天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 一体どのくらいの時間、車に乗っていたんだろう。謎の車がようやく停まったのは、これまた大きな、本当に大きな屋敷の中で。塀はどこまでも続いていて果てが分からない。ぐるりと首を回すと、お屋敷だけじゃなく豪華な日本庭園までもが目に入った。

 なんでこんなお金を持っていそうな人が、それも私みたいな大してお金を持っていない人間を誘拐したんだろう。

 だけど私は特に目隠しをされたり、手足を拘束されたりはしないで、代わりにとある広い部屋に通された。状況が全く飲み込めず、取り敢えず座布団に座り込んでいた私の前に、お茶とお菓子まで運ばれて来る。

 えーと、本当にどんな状況なんだろう……。

 出されたお茶菓子に手を出すこともはばかられ、暇な私は呆然と部屋の中を眺め回す。室内は和室なのもあってか、こざっぱりしてるけど、でも、置かれている調度品は、どれもものすごく値段が高そうだ。あの掛け軸だって、いくらするんだろう。一千万円ぐらいするのかな。

 そんなことを考えていると突然外側から襖が開いて、先程のおじいさんが現れた。

 おじいさんは、太々しい態度で私の前に腰を下ろした。おじいさんの隣には、やっぱり高級そうな皺一つ見当たらないスーツに身を包んだ、メガネをかけた気難しそうな顔をした男の人が控えている。

 その人は私にぴしりと会釈してから、
「手荒なことをして申し訳ありませんでした」
 丁寧に謝ってきた。
< 45 / 164 >

この作品をシェア

pagetop