天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「えーと、道松様……?」
道松様って、道松兄さんのことだよね。でも、道松兄さんを説得って? 豊島グループの会長さんと兄さんは、どういう関係?
……だから、はっきり言ってよ!
私が目で訴えると、
「あの、牡丹様は天正家の方ですよね。道松様のこと、ご存知ないのですか?」
うん、知らない。だって。
「だって私、ついこの間、天正家の養子になったばかりで……」
秘書さんは、ようやく納得してくれたみたい。「道理で……」と口先から小さな声がもれる。
「道松様は、与松様のお孫様――、豊島家の本家の血を引かれた唯一の存在です」
「え……。道松兄さんが豊島家の……?」
「はい。そこで道松様には与松様の跡を継がれるよう、豊島家に復縁していただきたいのです。
もし牡丹様が道松様を豊島家に復縁するよう説得できましたら、謝礼としてこちらを差し上げます」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは、アタックケースだ。ケースのフタが開くと、中には――……。
なに、これ。本物のお札なの……?
ケースの中には、お札の束がびっしりと詰められていた。本当に本物? 一番上の紙だけ本物で、下の方は全部新聞紙とかじゃないの?
私の考えていることが秘書さんにも伝わったみたい。
「全て本物です」
秘書さんはそう言って一束手に取ると、証拠とばかりパラパラと中身を見せてきた。
「これで足りなければ、もっとご用意させていただきます」
と驚きを隠し切れていない私に向かって付け加える。
もしこのお金が手に入れば、しばらくの生活は保障されると思う。
だけど道松兄さんが豊島家とやらに復縁するよう説得するなんて。道松兄さんのこと、まだろくに知らない私にできる訳がない。
でも、どうして道松兄さんは、天正家に引き取られたんだろう。こんな立派なお家があるのに。それも大企業のポストまで約束されているんだ。なにか相当な事情があるに違いない。
そんなことをうだうだ考えていると、おじいさんは気が短い性格みたい。いつまでも返事をしない私に痺れを切らして、無言で立ち上がると部屋から出て行ってしまった。秘書さんも、
「よくお考えになってください」
そう言い残すと、おじいさんの後について行った。
道松様って、道松兄さんのことだよね。でも、道松兄さんを説得って? 豊島グループの会長さんと兄さんは、どういう関係?
……だから、はっきり言ってよ!
私が目で訴えると、
「あの、牡丹様は天正家の方ですよね。道松様のこと、ご存知ないのですか?」
うん、知らない。だって。
「だって私、ついこの間、天正家の養子になったばかりで……」
秘書さんは、ようやく納得してくれたみたい。「道理で……」と口先から小さな声がもれる。
「道松様は、与松様のお孫様――、豊島家の本家の血を引かれた唯一の存在です」
「え……。道松兄さんが豊島家の……?」
「はい。そこで道松様には与松様の跡を継がれるよう、豊島家に復縁していただきたいのです。
もし牡丹様が道松様を豊島家に復縁するよう説得できましたら、謝礼としてこちらを差し上げます」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは、アタックケースだ。ケースのフタが開くと、中には――……。
なに、これ。本物のお札なの……?
ケースの中には、お札の束がびっしりと詰められていた。本当に本物? 一番上の紙だけ本物で、下の方は全部新聞紙とかじゃないの?
私の考えていることが秘書さんにも伝わったみたい。
「全て本物です」
秘書さんはそう言って一束手に取ると、証拠とばかりパラパラと中身を見せてきた。
「これで足りなければ、もっとご用意させていただきます」
と驚きを隠し切れていない私に向かって付け加える。
もしこのお金が手に入れば、しばらくの生活は保障されると思う。
だけど道松兄さんが豊島家とやらに復縁するよう説得するなんて。道松兄さんのこと、まだろくに知らない私にできる訳がない。
でも、どうして道松兄さんは、天正家に引き取られたんだろう。こんな立派なお家があるのに。それも大企業のポストまで約束されているんだ。なにか相当な事情があるに違いない。
そんなことをうだうだ考えていると、おじいさんは気が短い性格みたい。いつまでも返事をしない私に痺れを切らして、無言で立ち上がると部屋から出て行ってしまった。秘書さんも、
「よくお考えになってください」
そう言い残すと、おじいさんの後について行った。