天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「あれ。天羽のじいさんから聞いてないのか?」

 私が小さくうなずくと、二人もそろって首を傾げさせる。

 なんだろう。私だけがこの状況を飲み込めてないみたい。なにより梅吉さんが言った、一緒に暮らすって言葉が私の中で引っかかっている。

 なに一つ理解できていない中、突然頭上からドタバタと鈍い音が鳴り出した。続いてバンッと勢い良くリビングの扉が開くと、小さな塊が中に飛び込んで来た。

「ねえ、ねえ! 牡丹お姉ちゃんが来たって本当?」

「こら、(すすき)! 家の中を走り回ったらだめだろう」

 影の正体は小さな男の子で、小学三年生くらいかな。藤助さんに叱られているのに、きらきらと大きな瞳を瞬かせている。

 すっかり興奮している芒くんの後ろから、今度は目付きが鋭くて、それと同じくらい眉がきりっとしている、やっぱりイケメンがゆらりと気怠げに入って来た。

「ったく、うるせえなあ。どこぞのバカの影響を受けちまったんだろう。かわいそうに」

「おい、道松(みちまつ)さんよ。どこぞのバカって、もしかして俺のことか?」

「もしかしてもなにも、お前以外に誰がいるんだよ」

「なんだとーっ!?? 誰がバカだ、誰が!」

「ちょっと、道松も梅吉もケンカしないでよ。もう、毎回止めるこっちの身にもなってほしいよ」

 顔を合わせるなり、ケンカを始めた道松さんと梅吉さん。そんな二人の間に藤助さんが止めに入る。

 だけど、
「この二人がケンカするのはいつものことです。いい加減、あきらめた方が聡明ですよ、藤助兄さん」
 いつの間に部屋にいたんだろう。藤助さんの後ろに銀縁眼鏡をかけた色白の、やっぱり目元が涼しいイケメンが立っていた。
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