天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 ……うん、やっぱり簡単には帰してくれないみたい。それは、まあ、そうだよね。すぐに帰してくれるくらいなら、そもそも無理矢理連れて来たりしないよね。

 だけど、いつまでここにいたらいいのかな。もしかしたら一生ここで過ごさないといけないの……!?

 再び一人きりになった部屋の中で、私は急に不安になってきた。

 命の危険はなさそうだけど、でも、それでもよく知らないお屋敷の中で一生過ごすのなんてごめんだ。この調子だと学校にも行けなくなっちゃうかも。

 カバンの中からスマホを取り出して時間を確認すると、午後三時三十五分だった。

 今頃だったら本当は、藤助兄さんがお菓子とお茶を用意してくれて、おやつタイムのはずだったのに。確かにテーブルの上には手付かずのお茶と高級そうな、ツツジとバラの形をした練り切り菓子があるんだけど、どうしてだか食べる気にはなれなかった。

 私がいつまでも家に帰らなかったら、兄さん達も心配するだろうな。せめて兄さん達に、ここにいるって知らせることができたらなあ……って、ああ、そうだ。どうしてもっと早く気付かなかったんだろう。

 スマホを持っているんだから、家に電話をかければ良かったんだ――!

 私は早速スマホを操作して家に電話をかけるけど。あれ……、おかしいな。電話が通じない。

 スマホの画面を見ると、
「けっ……、圏外――!??」

 アンテナが一本も立っていなかった。

 なんで、どうして地下や山の中fでもないのに圏外なの? ウソでしょう。それとも私のスマホ、壊れちゃったのかな。

 どうしよう。これじゃあ助けを呼べないよ。本当に大ピンチだ。

 こうなったら……、自力で逃げ出すしかないっ!!
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