天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
「はあ? 牡丹がストーカーされてるって?」

「世の中にはいろんな趣味のやつがいるからなあ」とソファーで横になっていた梅吉兄さんが上半身を起こし上げながら言う。

 するとキッチンから出て来た藤助兄さんが、
「もう、梅吉ってば!」
 私の代わりに怒ってくれた。

「それより牡丹、大丈夫なの? ストーカーなんて。警察に言った方がいいよね」

「でも、後をつけられてるだけで、実際にまだなにかされた訳じゃないんだろう? 警察は実害がないと、なかなか動いてくれないぞ」

「そうなの?」

 そう訊ねる藤助兄さんに、私も一緒になって首を傾げる。藤助兄さんは、
「梅吉ってバカだけど、変なことは知ってるよね」
と感心気に後を続けた。

「おい、藤助。バカは余計だ! ったく。それよりも、そのストーカー犯をどうするかだ」

「だったらさ、牡丹ちゃん、これから俺と一緒に帰ろうよ」

「え……? 桜文兄さんとですか?」

 突然の申し入れに、私は目を点にさせた。

「うん。牡丹ちゃん、部活終わるの、今日くらいの時間なんでしょう? 俺も同じくらいだしさ」

「でも、つきまとわれているかもってだけで、私の勘違いかもしれないですし……」

「それならそれでいいよ。それより、もしその男が本当にストーカーで、牡丹ちゃんになにかあったら大変だよ」

 だから一緒に帰ろう、と桜文兄さんは繰り返す。
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