天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 知らない人に後をつけられているみたいで不安だったけど、しばらくの間、桜文兄さんが一緒に帰ってくれることになって。だから大丈夫だよね、と一日経って目覚めたばかりの私は写真の中のお母さんに話しかける。

 制服に着替えて、顔を洗って髪をとかして。朝ご飯もしっかり食べて、準備万端。

 家を出ようとした私に桜文兄さんが、
「牡丹ちゃんも一緒に行こうよ」
 そう言ってくれたけど……。私とは反対側の兄さんの隣を歩いている菊は瞳を鋭かせて、私のことを睨んでくる。

 なによ、文句があるなら私のことを誘った、桜文兄さんに言えばいいじゃない。だけど菊はつんと口先をとがらせるばかりだ。肝心の桜文兄さんは菊の態度に気付いてないのか、気にしてないみたい。

 それにしても。桜文兄さん、本当に背が高いな。隣に並ぶとよく分かる。

 ちらりと桜文兄さんのことを見上げると、にこにこと朗らかな表情をした兄さんが、
「今日の夕飯はなにかなー」
とまだ今日も始まったばかりなのに、もう夕飯のことを考えていた。

「桜文兄さん、夕飯って気が早いですよ。まだお昼にもなってないのに」

「んー? そうかなあ」

「そうですよ……って、なんだろう? あの人だかりは」

 学校に着き校門を潜り抜けるとガラの悪そうな、怖い顔をした男子生徒の集団がずらりと左右に分かれて並んでいた。

 彼等は私達の姿が目に入ると、ぴしりと一斉に頭を下げた。
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