天正さんちの家族ごっこ〜私に異母兄弟が七人もいる件について〜
 部活が終わって、私は約束通り、桜文兄さんが所属している柔道部が活動の拠点としている道場の前に立っていた。

 美竹から聞いた話によると、朝、校門の前に立っていた男子生徒達は、桜組と呼ばれている集団で。主に柔道部の人達で構成させている、桜文兄さんの舎弟なんだって。

 桜文兄さん、みんなから慕われてるみたいで。やっぱりウチの兄弟はみんなすごいなって。そう思っていると、
「ごめんね、牡丹ちゃん。お待たせー!」
 桜文兄さんが、のしのしとやって来た。

 けど。

「は、桜文兄さん、その後ろにいる方々は……」

「ん? ああ。コイツ等もついてくるって聞かなくてさ」

 桜文兄さんの背後には、ずらりと今朝方も見かけた、桜組の人達が並んでいた。みんな、目をギラギラさせて、なんだかぴりぴりしてるみたい。

「牡丹嬢は、我々桜組が命に懸けてお守りします!」

「ストーカーなんてクズ野郎、俺達がボコボコにしてやりますよ!!」

 そう声を上げながら、ぞろぞろとついて来る集団に私は身を小さく縮ませる。

 す……、すっごく恥ずかしい……っ!!

 やっぱり桜文兄さんにお願いしなちゃ良かったと思い直しても、もう遅い。朝、菊が後悔するって言ったのは、きっとこういうことだったんだと今更ながら気が付いた。

「夕飯なんだろうね」と能天気に話しかけてくる桜文兄さんの声は、私の中に留まることはなく。右の耳から左の耳へ流れるばかりだった。
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